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南アルプス!〜その①あわや遭難〜


怒涛の3週連続登山から早2週間。暫しの休息を挟み、南アルプス鳳凰三山に行ってきました。 今回のメンバーは、奥白根、瑞牆山に続いて3回目のご一緒であるKさんと、Kさんの山仲間であるNさんの3名。

強靭な体力、そして高所への飽くなき探究心(?)をお持ちのKさん と、Kさんに匹敵する体力をお持ちで、しかも登山の経験値も高いN さんという頼もしいお二人に囲まれ、一人へなちょこの私が果たし てご迷惑をかけずに踏破できるのか。 というところが課題の今回の山行となりました。

鳳凰三山へのアプローチにはいくつかルートがありますが、今回は青木鉱泉からドンドコ沢コースを使って鳳凰小屋に宿泊、 地蔵岳、観音岳、薬師岳と縦走した後、中道を使って青木鉱泉まで戻ってくるという周回コースとのこと。 夜叉神からのコースは比較的易しいコースとなっているようです が、登山口から薬師岳山頂までの所要時間やアクセス等を考えると やはり青木鉱泉から入る方がいいようです。

そういう意味で人気のあるコースだということでしたが、短時間で 登れるというだけあって、高低差がかなりのものです。 初日はおよそ1,200mを上り、二日目は単純計算でも縦走後の薬師岳から1,700mを下りるというかなりのハードコースです。 1/25,000の地図で確認すると等高線もかなり込み入っているよう で、途中滝が4つあるのが多少気分的にも救いがあるだけで、初日 はただひたすら小屋を目指して登るのみ。 予定所用時間は7時間強で、まあなんとかなるかな。との予想。

しかし、問題は翌日です。 縦走後の薬師岳からの下りは、ほぼ険しい急坂を一気に下りてこな ければならず、所要時間は9時間強。痺れます。

何度も何度も1/25,000の地図に目を通し、若干の不安を抱きなが ら、いよいよ当日を迎えることとなりました。 当日3時起きで身支度をし、4時半にKさんにピックアップして頂 いて、登山口である青木鉱泉へと出発。 落石した形跡のある荒れた林道を進むと、登山口である青木鉱泉が 見えてきました。そこそこの登山者もいるようです。

青木鉱泉で登山カードを記入していた明らかにテン泊と思われる男 女がドンドコ沢へ向かう姿を見やり、程なくして到着したNさんと 合流していよいよ私たちも出発です。ちょうど8時でした。

歩きはじめてすぐに、登山口によくありがちなルートを示した大き な看板を発見。 事前に見た地図だと、沢付近に付けられた道と、山側の道二手に分 かれる分岐がすぐにくるはずだったので、私はてっきりその看板が 分岐だと思っていました。 一瞬、沢に下りる方の道へ戻りましたが、先はかなり荒れていて、 とても正規のルートとは思えず、元の道へと進みました。 後で色々調べた結果、その荒れている道は薬師岳方面(つまり、沢 を徒渉し、中道へと続くコース)だったのではないかと推測されま す。

常に左に沢を見て、ひたすら沢をつめていくコースだとの認識があ り、 徒渉ポイントは地図上にはないという絶対的観念、更には私達 の前を歩く、ベテラン風の二人が行く道に間違いはない。 という思い込みのせいでしょうか。 沢のすぐ脇についていた道が、途中でなくなり、前の二人が、山側 に向かって相当険しい坂を木の根を手がかりにして、登って行くの を見ても、さほどおかしいとも感じませんでした。 「え!?あんなに険しい道が正規のルートなの!!??」とは 思ったのですが、吸い込まれるようにして二人の後を私達も追う ことになりました。

やっとこさ登ったのは良いのですが、道がかなり荒れています。 歩きにくい箇所ばかりで、腐葉土はたっぷり積もり、踏み後は 見当たりません。 しかし、こちらの思惑を肯定させるかのように、たまに赤いペンキ のついた木が現れます。 でも、どうも様子がおかしい。 先を行く二人もどうやら道を見失ったようです。 そこから、私達5人の道迷いが始まりました。 先の二人の男性と、Nさん、Kさんは相当近辺をグルグルとルートを 探して歩き回ってくださいました。

しかし、まだ登山口からいくらも歩いていないのに、こんな場所で 道迷いとは、自分でもかなりの驚きでした。 時間はたっぷりあるとはいえ、このまま迷って最悪ビバーク…?? 等、最近読んだヤマケイブックスの「ドキュメント遭難シリーズ」 の数々の実話が思い出され、多少不安になっていきました。

ルートが見つからず、ペンキのあった木まで戻って、脇のルートを 辿ると、また消えかかったペンキの付けられた別の木を発見。 進んでみると、大きな沢筋が見え、地図と照らし合わせても、合っ ているのではないか?とも思えます。 NさんのGPSでも、ルート上を歩いているとのことだったし、沢を 常に左に見て行くのも地図通り。 しかもその沢筋付近に立てられた、青木鉱泉を指し示す看板があり 、やはりこのルートで間違いないのでは…??と思わせる点がいく つもありました。

「ちょっと見てくるわ!」と言って、Kさんが看板の先の状況を調べ に、ものすごい勢いで急坂を登って行きましたが、先は崖で、道はない。と戻って来たとき、Nさんが一言、

「戻りましょう」

と、言いました。 確かにそうだ。こうしてどんどん先に進んだら、それこそひどい 目に遭うかもしれません。 確実だと思われるルートまで戻る事は、道迷いの鉄則でもあります。 しかも、このルートは沢筋に付けられた道なので、通常鉄則として 言われている尾根に向かって上っても、登山道はひとつも付けられ ていません。 やはり、戻るしかありませんでした。

暫くして、先頭を行っていたNさんの 「ルートありました!!」の声に、大分ホッとはしましたが、 ちょうどその時道無き道を下っている最中で、手放しで喜ぶ余裕は 全くありませんでした。 とにかくあそこが、この登山の中でも最も怖いポイントだったかも しれません。 こんな道が正規ルートなの!?と思った木の根伝いの急坂をようや く下りてみると、沢の中にちゃんと徒渉ポイントのペンキがありま した…!! やはり、思い込みというものは恐ろしいものです。 無事沢を徒渉し、いよいよ正規のルートに戻りました。

しかし、私達が、ルートをいよいよ上り始めても、あの二人はなか なかやって来ませんでした。 「ここで彼らが遭難したら、後悔するから」と、Nさんは大声で 何度も「ルートありました!!」と叫びましたが、なかなか反応 はありませんでした。 しかし、何回目かでようやく、相手側から何かしらの反応があった ので、私達もそのまま先へと進むことに。

今回は何人も周りにいたので、何とかなるだろうと思ってはいま したが、道迷いとは、こんなふうに起こるのか。と、改めて山の 恐ろしさを感じました。 特に沢の場合は増水で涸沢に水が流れる場合もあるし、地図とは異 なる場所に沢が流れている場合も考えられます。 また、Nさんの話だと1/25,000の地図も5年くらいは改訂していな いとのことで、地図が誤っていることも勿論あり得ます。 しかも、迷っている最中にふと見た1/50,000の地図によると、 なんと沢の徒渉ポイントが2カ所もあることに今更ながら気付くと いう始末。 しかし、実際にはそのようなポイントは見当たらず、 結局私達が歩いていた場所が、地図上では一体どこだったのかは よくわからないままでした。

後にネットで色々調べてみたところ、山側の道は廃道になった? と書かれているものもあり、もしかしたら山側の道を歩いていたの でしょうか。 いずれにしても、あの道が何だったのかは本当に謎です。

しかし、この一大事に一番冷静沈着だったのはやはりNさんだった といえるでしょう。 あの判断は、本当に素晴らしいの一言。 Nさんご自身はちょっと判断が遅かった。と反省していらっしゃい ましたが、あの英断のおかげで大きなトラブルにもならなかったの だと思うと、心から感謝です。

しかし、ルートに戻って暫くして、Nさんがものすごく恐ろしい事を 教えてくれました。 先に歩いていた女性が話していたそうですが、ルートを探していた とき、書き付けを見つけたそうです。 そこには

「誰かたすけて」

と記されていたそうで、 「それを見てゾッとしました。」と、話していた。とのこと。

この話を、あの状況で私に話したら、きっと不安になるだろうと思 い、黙ってました。と…。

ひえーーーー!! こ…怖い…。 何もなくて、ほんとに良かった…!!

それにしても。 私の精神状態まで慮ってくださるNさん…ただ者ではない!

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