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  • 執筆者の写真junpei

日光白根山



雪山初登山となった、思い出深い天狗岳登山から早2ヶ月。 またも雪山へトライしてきました! 今回は以前夏に登った事のある日光白根山(奥白根山)です。

実は今回の登山は、ある人がきっかけになって計画されたもので、 雪山登山の基礎を教わるのが目的です。 そのある人とは、当時私を採用してくれた人事課の採用担当者であり、新人だったときのFT※(フレッシュマン・トレーナー)でもある、※所謂OJT 大変お世話になった会社の大先輩Kさんです。

Kさんは社内では相当な切れ者として有名で、切れ者と同時に キャラクターもかなり濃いので、多くの人に恐れられている人物でもあります。 そんなKさんと偶然帰りのエレベーターで一緒になった時、 山の話でひとしきり盛り上がったことがきっかけで、是非一度 私の師匠から本格的な雪山登山を教わりたいという話になり、 今回の登山計画が持ち上がりました。

師匠からは快諾を頂き、しかも今回は師匠の大学時代の山岳部の後輩で、 現在も一緒に海外登山等ご一緒されているというUさんを呼んで頂けるとの事。 しかもUさんは山岳指導員の資格をお持ちだということで、 雪山のノウハウを一から教わる貴重なチャンスということもあり、 とても楽しみな計画となりました。

前回の天狗岳では、師匠に騙されて6本爪とストックのみで登りきった私でしたが、今回いよいよ大枚をはたいて、冬靴、アイゼン、ピッケルと冬山登山には欠かせない アイテムをバッチリ調えました。ついに私もこれで山バカの一員です。

ということで装備にはいささかも不安はありませんでしたが、 今回の登山の危うさの全貌が見えて来た時には、妙な緊張感でモヤモヤ感が半端 では無い状態に…。 というのも、そもそも夏山の日光白根山しか登った事のない私は、今回もまた 丸沼からロープウェイ利用での登山に違いないと確信していた為、 かなり安心しきっていたのです。 何故なら日光白根山は関東地方では最高峰(2,578m)とされていますが、 丸沼からのコースはとても簡単なコースで、山頂付近は岩場が多くてちょっと 怖いけれど、かなり気楽な登山だったとの記憶があったからなのです。 参考⇨(過去のブログ)

しかしさすが私とは違い、きちんとしているKさん(私がいい加減すぎなのですが…) は、どこの登山口から登るのかをかなり気にしていて、師匠に詳細を教えて欲しいと お願いしたところ、どうやらもの凄いコースに挑戦させられることが Kさんのおかげで判明したのです。 そのコースとは、日光湯元にあるスキー場から出発するかなり難易度の高いコース。

どうやら、冬期期間は金精峠までの道が通行止めとなる為、丸沼まで車で入る事が できない。よって、丸沼ルートも菅沼ルートも使えない。 残るはハードコース湯元ルートのみ。ということらしいです。

ヤマレコ等で調べても、このルート、五色沼付近にある避難小屋で1泊する人も 多く、日帰りだと夏山ですら10時間はかかるという難コースです。 まして今はバリバリ雪山なので、所要時間はざっと12時間! 奥白根までが無理だとしても、前白根山までですら9時間かかるらしい…。 過去の登山を考えても、最高でも7,8時間位しか歩いた事は無く、 どう考えてもかなり厳しいコースなのだということはわかります。 とりあえず、前白根山がゴールで、もし行けそうなら奥白根山アタック! ということで話がまとまりました。

前日に宇都宮入りし、まずは餃子屋さんで今回の登山の隊長Uさんと顔合わせ。 優しくて、とても紳士な方です。 学生時代には、師匠にネチネチしごかれたというUさんですが、師匠のお話では、 師匠の一期下の代の方がイマイチだったとかで、更にその下の期のUさんが部を まとめていらした。とのことでした。 温和で静かな方ですが、今回の奥白根山もなんと20回程登っているそうで、 山に対する情熱は相当なのだなぁ…と思いました。

その後いつものお店にNちゃんも交えて集合し、前夜祭が行われました。 前日の4時起きに備え、20時半には解散。 いよいよ4時45分に宇都宮を出発し、日光へ。 7時。スキー場からいよいよ登山開始です。

スキー場をひたすらテクテク歩きしたあとは、いよいよ樹林帯に入り相当等高線の 混んだ尾根をひたすら450m程急登していきます。

実はこの登山の前に、地図が読めなくては話にならない。と一大決心。 平塚晶人さんの読図に関する本を2冊読了。 尾根と沢の関係、地図の読み方、コンパスによる現在地の確認方法等、 知識だけはかなり頭に詰め込んで来ていました。 ということで、事前に何度も地図を眺め、自分なりに地形を想像しながら歩くことに 注意しました。 1/25000の地図を購入し、まずは磁北線を記入。必要箇所をB4版にコピーして 蓋付きのビニールシートに入れて、折りたたみいつでも出せるように携行。 これも、本で学んだ手法です。 実際にコンパスを使って地図読みの練習もしたいと、磁北線を書き込んだ地図を Uさんに見せると、 「さすが、教育がいい」とお褒めの言葉を頂きましたが、 師匠は「オレは教えてないもん」とニコニコ顔。 「二人も地図持ってくるならオレはいらんだろう。と思って持ってきとらんもん。」 しっかり事前学習した私とぶっつけ本番の師匠。 やはり手痛い過去の経験から、 師匠を反面教師とすることで弟子がしっかりと育つ(?)のでしょうか。

「師匠の言う事を全面的に信用すると痛い目に遭う。」

これは、今では完全に私の中では格言と言っても過言ではありません(笑)

さて、樹林帯に入ると、いよいよアイゼン装着の指令が出たので、 比較的平らな場所を確保し、装着にかかります。 人生初のアイゼンによる歩行です。2,3歩試しに歩いてみました。

なんと!!!

この安定感、全然違います。あの天狗岳での6本爪のアイゼンとは雲泥の差です。 思わず声に出して感激していると、師匠も苦笑です。 Uさんに教わったばかりのキックステップで急登をひたすら、ただひたすらに 登って行きます。相当な急斜面です。

トラバースした方が登りが緩まるので本当は楽なのかもしれませんが、 今回は雪質が悪く、ゆるゆるで、少しでもトレースをはずすと 足がズボッとはまってしまい、歩きにくい事この上ありません。 しかもトラバースしながらの道幅は狭く、少しでも踏み外せば真っ逆さま…。 かえって尾根をそのまま登った方が楽なように感じました。 このひたすらの登りは、相当にきつかったのですが、途中から持ち替えたピッケル のおかげもあり、なんとか外山というコルまで到着。 Uさんのお話だと、夏山ペースで登って来ているとのこと。 Kさんは「奥白根これなら行けるぜ!!」とやる気満々です。

前白根山までは、ここまで急な登りはありません。 その後小ピークを右手に巻き、二つ目のピーク天狗平に到着。ここで前に見える ピークが前白根山かどうかを調べる為に、コンパスを使って位置を確認。 どうやら合っているようです!嬉しい!! 尾根伝いに3つ目のピーク前白根山へ到着しました。 この辺は雪が風で飛ばされて着雪できない程の強風が吹くところなのだそうで、 案の定 頂上付近はすごい風。

目的達成の喜びも束の間、このあとどうするかを決めなければなりません。 血気盛んでバリバリ体育会系のKさんは、奥白根まで行くことに何ら不安はない様子。 勿論師匠も当然行く気満々です。 私は、外山までのあの急な尾根を降りる事を思うと、奥白根まで行くのは危険だと 判断しました。 前白根の段階で、まだまだ余力はあったので、おそらく頑張れば山頂へは行けるかも しれない。 しかし、問題は帰りです。登るのは易しいが、下りは登りの3倍から4倍難しい…。 あの急勾配を降りる為には、相当な集中力と体力が必要です。 私は行かないことにしました。

そこでなされたトップ会談の結果。 やる気満々の二人が奥白根山アタック隊として出発。残る隊長と私はしばらく のんびり前白根山山頂を楽しみ、行けるところまで行って引き返す。 お昼ご飯もそこそこに、二人は急いで山頂目指して出発しました。 早いペースで登って行かないと、下山する頃にはとっぷり日が暮れる可能性がある からです。 後から聞いた話ですが、師匠は「あんた20回も登っとるんなら、今日はいいだろ。」 と、私と一緒に下山するようお願いしたようです。 そもそも湯元から登るコースはしんどいコースなので、そこを行ったというだけで 「物好き」と言われかねないのに、山頂まで目指して行くなんてやっぱり頭が おかしいとしか思えません(笑)

Uさんの話では、前白根からまず小ピークを越えて避難小屋まで降りると、そこから の登り返しがまずきついし、その後の長い急登も相当で、山頂からの下山がこれまた 大変。慎重に急坂を降りてようやく避難小屋まで着いたとしても、そこから前白根山 までの登りがまたきつく感じるだろうとのこと。 私たちはゆっくりお昼を食べ、しばらくのんびりしてから、五色山へと向かいました が、五色山までの斜面がこれまたキツイ! 途中で断念してまた前白根まで戻り、アイゼンワークとピッケルの使い方を教えて 頂きました。 そうこうしているうちに、二人が斜面を急登しているところが見えてきました! 二人がしばらく経って、下山していることを確認したあと、私たち二人も下山する べく前白根山を出発です。

外山のコルで一回休憩を入れ、あとは一気にスキー場まで下山です。 しかし、予想していた通り、上から尾根を見下ろすと絶壁としか思えず、 平らな箇所はひとつもなく、ただひたすら下るしかありません。 覚悟を決めて、下山です。 一歩一歩確実に、習いたてのアイゼンワークでとにかく慎重に降りて行きます。 Uさんのように軽々ステップするなど、無理です。 しばらくすると、すぐに距離が開いてしまいます。 気をつけて降りているつもりではいても、すぐに足に疲労感が襲ってくるので、 注意力も散漫になりがちで、油断するとすぐにトレースを踏み外し、 足が深くまで埋もれます。 そこから脱出するのがこれまた大変で、その度にどんどん体力が奪われて行きます。 途中、足がはまる事数回、転ぶ事数回、いくら下っても、全くスキー場は見えて きません。

汗が噴き出し、足はガクガク。ちょっと気を緩めたら滑落しそうで恐ろしい。 これは、天狗岳の比ではない。これが雪山か…!と思い知らされます。 だんだん足も疲れて来たのか、うっかりやってしまいました。 アイゼンを引っ掛けたのです。 これが一番危ない! 前に倒れて、木が側にあったのでなんとか大丈夫でしたが、 本当に肝を冷やしました。 やはり、疲れてくると、こういうことも起こりうるということがよくわかりました。

これでもかというくらい下って下って下って…、ようやくスキー場に降りる鉄線 のエリアまで来たときの安堵感と言ったら!! このあたりから、もう安全と判断したのか、Uさんはどんどん先へ降りて行って しまったので、1人でゆっくりゆっくり最後まで気を緩める事無くリフトの付近まで 歩きました。 下で待っていて下さったUさんにアイゼンを外しても大丈夫だと言われて、 ザックにしまい、晴れて身軽になって再び広いスキー場をテクテク歩きです。 途中、「ここで滑落停止の練習できないでしょうか。」とUさんに聞くと、 練習できそうなところを教えてくれました。 まずはお手本。 滑落しそうな場所は両手でブレードを上に、ピックを下に向けてピッケルを持つ。 滑落したら、まずは腹這い。 足を曲げ、足先が雪に着かないよう注意。 ブレードとシャフトを自分に引き付け、力が入りやすいように胸の下を通るように シャフトを持つ。スピッツェは雪上から上に向いているように。 体重をかけ、満身の力でピックを雪の中に打ち込む。 私も習ってやってみると、腹這いに回転する方向を間違ってしまいました。 右手にブレードを持っている時は、右に回転しないと、スピッツェが自分に刺さる ことがあるので、絶対に回転する方向を間違えないようにとのこと。 数回滑落しては停止。の練習を続け、何となく頭にイメージが湧いてきたところで 練習終了! またテクテク歩きで無事登山終了です。 雪山登山のいろはを習い、練習する事ができて本当に実りの多い今回の登山でした。 往復でだいたい8時間あまりで戻って来ることもできたし、 我ながらよく頑張りました。

その後、駐車場で二人の帰りを1時間程待ち、完全に白根山登山が終了となりました。 ヘロヘロになって帰って来たかと思えば、二人とも疲れたとは言いながら、 いやはやどうしてまだまだ余力のありそうな雰囲気。 やはりただ者ではありません。 昨年の秋に雪の降る中 、高山に登ったときに、 「こんな日に登山するなんて、キジルシだよー。」と自分で言っていた師匠。 そっくりそのままそのお言葉をお贈りしましょう。 確かにお二人は「あっぱれなキジルシ」です!(笑)

奥白根山まで行けなかったのは少し残念ですが、今回でようやく中級になれた ばかりの私ですので、身の丈にあったペースで登山を楽しみたいと思います。 結果的には本当にあそこでやめておいて良かったと、つくづく感じています。 おそらく、行っていたら、帰れなかったかもしれません。 まだまだへたれの私ですが、今後とも皆様、お付き合いの程お願い致します!

今回、様々な事を教えて下さり、へたれの私の為に一緒にお付き合い頂いて 先に下山して下さったUさんをはじめ、師匠、Kさん、ありがとうございました!!

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