すっかり季節は春になり、今年は雪山には縁のない年だったなぁと思っていた矢先、Tさんから至仏山のお誘いを受けました。 至仏山への登山口である鳩待峠までの道路は、冬季期間閉鎖されているのですが、毎年4/20前後からゴールデンウィークまでの僅かな期間だけ通行が許されています。 この期間を過ぎると、今度は植生保護の為山開きまで登山道が歩けなくなるので、貴重な雪山を楽しむべく多くの登山者が訪れているようです。 実はこのルート、2年ほど前、Kさんから計画を提案されていたものの、結局実現できずにいました。 やはり期間が相当短いことと、できればゴールデンウィークを外したいこと、更にはお天気との兼ね合いもあり、実現にはいくつものハードルがあるので当然と言えば当然のことと言えます。 今回も、やはり行けるとなればこの日しかないという決め打ちとなりましたが、幸いなことにその日の天気は上々のようでした。 いよいよ当日。平日とは言え、期間限定の人気のコースということで、なるべく早く現地に着いていた方が良いと考え、Tさんに3時に迎えに来て頂いて、鳩待峠へ出発となりました。 鳩待峠駐車場は50台程しか駐車できないため、ここからあぶれた車 は尾瀬戸倉に駐車し、乗り合いタクシー等で鳩待峠へと向かう事に なります。戸倉に着いてみると数台の車は停まっていたものの、乗り合いタクシーらしき車も、登山客らしき人も全く見かけませんでした。しかし、鳩待峠駐車場は満車との看板が掲げられており、一抹の不安がよぎります。それらしき人もいないし、時間的にもまだ大丈夫だろうとの判断で、とりあえずそのまま鳩待峠へと向かう事にしました。途中すれ違った乗り合いバスらしき運転手さんも、私達には見向きもしなかった為、おそらく大丈夫だろうとそのまま進みます。相当な距離を進みようやく駐車場へ到着ですが、今更ここから戸倉へ帰れと言われてもちょっとイヤだな〜。と思いながら駐車場へ入って行くと、唖然としました。 殆ど埋まっており、スペースは僅か数台といったところ。 いや〜!!さすがの人気!!まだ6時にもなっていないのに、ほぼ満車とは…。二人驚きを隠せませんが、とりあえず駐車できたことにまずは一安心。 久しぶりの冬装備に手間取りながら、歩き始めはチェーンスパイクに決め、いざという時の為に12本爪を携行。軽アイゼンは車に残します。念のために入れた「もしもグッズ」は通常より若干重く、要らないかな…と思いながらもピッケル(残雪期用)はそのままくくりつけたまま、ずっしり肩へ食い込むザックを背負い、いよいよ出発となりました。 周囲を見渡すと、居合わせた人々の大半がスキーヤー。 事前にチェックしたブログの通り、至仏山がバックカントリーとしてかなりの人気を博していることは一目瞭然でした。スキーを履いたまま山頂まで登って行くのはかなり辛そう。 ただ登るのですら大変なのに、これはこれで苦行だなぁとスキーヤーを横目で見つつ、ダラダラとした坂を登って行きます。 積雪はかなりの量。しかし雪質はザラメ状で既に腐っていました。早朝でこの雪質では先が思いやられるなぁ…と思いながらの歩行です。 思った通り、少しでもトレースを外すと、膝くらいまでは軽く踏み抜くので、その度に地味に体力が奪われて行くのがわかります。ただ、この雪の感じだとアイゼンの出番はなさそうで、ツボ足でも歩けそうな雰囲気。途中グズグズの雪にバランスを崩されながらも、 等高線はまだ緩やかな方だったことがせめてもの救いで、まあまあのペースで登って行きます。 ガスの中を進むうちに、樹林帯を抜け、視界が開けると、美しいピークが見えてきました。小至仏山です。そして、尾瀬ケ原を挟んでドーーンと見える燧ヶ岳の立派なこと!! そろそろ疲れも出始めた頃でしたが、この辺りから急速にガスが抜け、青空に映える雪山の美しさに疲れも忘れる程でした。 いよいよ小至仏山を目の前にしたコルへ到着。ここから小至仏山を見上げるとかなりの急登で、気持ちは急速に萎えて行きます。 げーーー!!これを登るのか!? しかし、よくよくトレースを確認したところ、巻き道を発見! 確か私が事前にチェックしたブログにも小至仏山は巻くと書いてあったような気がしていたので、ホッと胸を撫で下ろします。ただし、巻き道はかなりの狭さ。人一人が通れるだけの幅しかなく、踏み外せば急斜面へ転げ落ちること必死。 この雪質なら、滑落してもそうは滑らないはずですが、落ちた箇所から巻き道へとリカバリーするのは相当大変そうです。 ということで、美しい景色に気を取られてトレースを踏み外さない ように細心の注意を払い、次のコルまで黙々と進みます。 やがて至仏山の頂きが見え、緩やかな登りを進むと山頂へと到着です。 天気は最高で、谷川連峰を始め浅間山、男体山、奥白根山等周囲の山々がくっきりと見えていました。風もなく、手袋を外していても 全く寒くないというまさに登山日和なのでした。 山専ボトルに入れて来たお湯で、二人共カップラーメンを食べ、いよいよ山頂からスキーで滑降しようというお二人を背後から見送った後、私達も下山開始となりました。ここからは、登山に来ている人達も尻セードやソリで一気に山ノ鼻まで滑り降りる人が多いとブログにも書いてありましたが、やはりよく知っている方は、みんなソリをザックにくくりつけており、かなりの早さで滑り降りていきます。確かに、この急斜面。かなりキツイ!!ソリで下りればかなり体力温存ができることでしょう。 この山頂から山ノ鼻までの道、 通常は一方通行で、この道は登りでしか使えません。それがこの時期だけは逆方向へと辿る事が許されており、尾瀬ケ原と燧ヶ岳を堪能しながら下山できるという、本来ならばかなりの特典とも言える期間限定ルート。 しかし、その素晴らしい景色を堪能する余裕はなく、必死の形相でただひたすら下山するのが精一杯!! Tさんは忍者ハットリくん走法よろしくスイスイと走るように急斜面を下って行きますが、私はそんなふうには下りられず、否応無くふくらはぎに乳酸がたまっていきます。どうやら、私はグズグズ雪の下りがヘタクソのようです。 以前赤城山でワカン装着で下山しようとした時も、全く歩く事ができず、最終的にツボ足で下りるしかなくなったことを思い出しました。あの時は新雪で足抜けはもう少し良かったのですが、今回はかなりグズグズの腐った雪。すぐに足裏には団子が出来、数歩行く毎に団子をストックで叩き落とし、また踏み抜きで体力を奪われ、歩きにくい事この上なく、相当苦労して山ノ鼻までへとへとになりながら下山してきました。 後で見てみると、等高線はかなり混んでいて、一気に800mほど下っていました。 私にとっては、登りよりも何倍も辛く、厳しい下りでした…。 山ノ鼻で一息入れ、沢沿いの平坦な道を暫く戻りますが、ここも 雪質は相変わらずで、踏み抜きを繰り返す度に、地味に疲労度は増していきました。 やがて登りにさしかかり、鳩待峠が近い事がわかったところで、改めて自らを鼓舞し、最後の登りを一歩一歩進んで行きます。 ようやく鳩待山荘の建物が目に入ると、嬉しさで一杯!息を切らしながら、とうとうゴール!! いや〜!!やはり雪山登山は体力勝負。久々きつい登山となりました。 Tさんは余裕の表情で、さすがの体力!!足手まといとなって、ご迷惑をおかけしました…! 山頂からの下りでは、どうなることかと危ぶまれた道中でしたが、なんとか無事に戻ってくる事も出来、しかも念願の至仏山を残雪期に登れたということで感慨もひとしお。 百名山も、ボチボチながらこの至仏山で記念すべき30座を記録ということで、思い出に残る山行となりました。 Tさんにお誘い頂いて、最高のお天気の中、楽しい雪山登山でした。 Tさん、ありがとうございました!! また是非山にご一緒させてください♪ 【今回の至仏山登山記録】 行動時間 6時間48分 6:42 鳩待峠 9:16〜9:55 至仏山(2,228m) 2’34(2’45) 11:38〜11:54 山ノ鼻 13:54 鳩待峠 2’00(1’20) ∴ 百名山記録 30/100 【丹沢山 奥白根山 筑波山 草津白根山 四阿山 浅間山 金峰山 瑞牆山 火打山 妙高山 大菩薩嶺 鳳凰三山 谷川岳 蓼科山 雲取山 八ヶ岳 常念岳 仙丈ヶ岳 甲斐駒ケ岳 赤城山 男体山 岩木山 富士山 美ヶ原 北岳 両神山 鳥海山 霧ヶ峰 那須岳 至仏山】