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執筆者の写真junpei

蕎麦粒山〜魔の修行登山〜破線ルート第三弾



2月初め、Nちゃんと蕎麦粒山登山を決めたものの、登山三日前の積雪を懸 念し川苔山へ予定変更した為蕎麦粒山は未だ登頂していない私達。 積雪の心配はなくなったこの春、蕎麦粒山への破線ルートをいよいよ登る こととなりました。  当然時間がかかることを見越して、始発のバスに乗るため青梅に前日入りと なりましたが、私は姫路出張から直接前乗りするため深夜の就寝となりまし た。睡眠もそこそこに4時に起床。Nちゃんと天気の心配をしながら出発で す。Nちゃんがわざわざお休みを取ってくれての決め打ちとなる為、急な予 定変更には無理があり、多少天候に不安があってもとりあえずは決行という のが致し方ないところです。 ヤマテンでは降雨の予想はなかったものの、麓の天気はあまり芳しくなく、 既に雨粒が落ちて来ている状況で、今日はほぼ修行登山に終始するだろうと 半ばどんよりした雰囲気で奥多摩からバスに乗車しました。相変わらず微量 の雨があったことから、バスの中でスパッツを履き、久しぶりの雨具を纏っ た姿で登山開始となりました。 川乗橋バス停から林道に入って程なく、蕎麦粒山へ直登できるトヤド尾根が 始まります。 ここからは、蕎麦粒山山頂までの単純標高差およそ1000mの尾根筋をただ ひたすらに登り詰めて行くロングルートとなっています。エスケープルート もなく、一度登り始めたら最後どの道を辿っても最低でも8時間は覚悟しな ければならないというかなり過酷な登山道です。更に言えば、この直登ルー トは破線(バリエーション)ルートとなっており、途中道迷いのポイントも あるので、レベルとすれば中級以上となるでしょう。そこへ持って来てのこ の悪天候。霧で視界が遮られる事から、地形を読む際に必要なヒントがひと つ削られることにもなり、難易度は更に増します。しかも、雨で精神的な余 裕がなくなる恐れもあり、破線を行く行程としてはかなり絶望的な様相を呈 してきました。 もし、雨がひどくなってきてこれは無理だとなったら、途中で引き返し、鍾 乳洞にでも行きますか。と、お互いなだめ合いながらトヤド尾根に取り付き ました。 案外踏み後はしっかりしていて、途中目印のテープも散見されている為大分 安心はしましたが、やはり破線たる所以が随所にちりばめられたなかなかの 道ではありました。 路面が荒れ、足元が不安定な箇所あり、崩落気味の箇所あり、はたまた転げ 落ちそうになるような斜度のついたザレ場等、次々やってくるバリエーショ ン攻撃を受け続けます。しかしその攻撃に負けず、二人で1/25,000の地図 と照らし合わせながら、コンパスを使って方向を確認し、地形を読む作業も 細かく行いながら進んで行きます。 相変わらずの急登と緩和を繰り返している登山道に辟易しながらも、およそ 2時間程で第一のポイントである笙の岩山(1254.8m)へ到着しました。 タイムも上々、雨も止み、これなら行けるかと、蕎麦粒山を目指して再び出 発です。あとは地形図からいけば、然程急登はありませんが、途中迷うポイ ントもある為気は抜けません。 その、1/50,000に記載された迷いポイント。1/25,000を見てもあまりそ の理由はわからないままでしたが、ズバリそのポイントを指し示した方がい らっしゃいました! そのお方というのが、今回姫路出張で一緒に勤務したOさんです。 このOさん、なんと前職で地図を作るお仕事をしていたとのことで、あの重 たい三角点の石柱を背負い、櫓を建てて測量…というまさに点の記を作って いた方なのでした! 航空写真を元に実際等高線を引いて地図も作っていらしたとのことで、なん という巡り合わせ!?と驚くばかり。 単独行をする為に始めた読図の勉強で、今や破線ルートを攻略しようと更に 地形図が身近になった私にとっては、神様の思し召しとしか思えないような 出会いでした。最近悔やまれるのは、土地家屋調査士だった父に何故もっと 色んな事を聞いておかなかったのかということ。私が地形図に興味を持つよ りも随分前に父は他界。質問しようにも不可能になってしまった今、Oさん のお話はなんとも興味深いものでした。 それにしてもお仕事とは言え、作業着に安全靴で藪漕ぎをしながら道を造り 90kgもの荷物を背負って登山をし、測量する為の櫓を建て、更には三角点 間を遮る木々の枝を伐採するお話等、私からすれば超人としか思えない逸話 の数々なのでした!! 尊敬という言葉以外に称賛する言葉は見つかりませんでした…! そんなOさんに、今回のルートをざっと見てもらったところ、真っ先に指し 示したのがそのポイントなのでした。さすがです…!! そのポイントは、主脈の尾根筋がわずかに二俣に分かれているポイントで、 注意していれば、正解の尾根筋を通れると思われましたが、Oさん曰く、尾 根筋とは言え、二俣になった尾根に続く小ピークは同じ10m程の高低差で、 おそらく進んではいけない尾根筋に誘い込まれる可能性があるのでは?との お話でした。また、こういう時には地形図に表記されている樹木の種類を見 ることも重要だとのこと。迷いポイントを見ると、正解の尾根筋には広葉樹 マーク。不正解尾根筋には針葉樹マークが。なるほど、このポイントで周囲 の木々をチェックすれば間違っているかどうかすぐわかるということです。 ムムム!いつも漠然としてしか見ていなかった、針葉樹マークと広葉樹マー ク。こんなところに地形を読むポイントがあったとは…!! さて、いよいよその二俣ポイントが近づいてきましたが、一瞬迷いはあった もののあまり意識する事なく無事に通過したようで、あれ??さっきのとこ ろか? と思った所で、GPSで確認するとやはり既に通過した事が判明、改めて周囲 の樹木をチェックしてみるとやはり地形図通り広葉樹しか生えていませんで した。 スゴイ!! やれやれと胸を撫で下ろし先へ進みますが、Nちゃんから「待って」の合図 が。なんとこけた拍子に膝を突き出た株に強打した模様。骨は大丈夫との事 でしたが、相当内出血している様子で左膝が血で膨らみ、ぷよぷよと浮き出 ています。取り急ぎ携行していた消炎スプレーで様子を見ますが、なんとか 歩けそうだとの事で再び歩き始めました。 一度止んだはずの雨はまた降り出し、再びカッパを着、ザックカバーを付け たりしながら、緩やかながらも地味にアップダウンを繰り返す尾根筋を更に 進んでいきました。 比較的広い間隔の尾根を進んでいる破線終盤に差し掛かり、あともう少しだ と思った矢先、ついに肝を冷やす事件が発生しました。そう。道を間違えた のです。 実は、歩きながら気付いていた事がひとつありました。 この破線ルート、忠実に尾根の真ん真ん中を歩ける訳ではないということ。 実際、踏み跡はその尾根のピークを巻きつつ付けられている箇所が、かなり 多かったように思います。 それもそのはず、ど真ん中の尾根を歩いて行くと、岩や木々に遮られ、歩く 事自体が不可能な地形になっている尾根が意外と多いからです。 私が間違えた尾根もそうでした。狭い尾根のピークに向かって登ろうとした ところ、踏み跡はかなり不明瞭となっていて、私はトラバース気味にピーク 左を通って尾根に上がり、そのまま尾根筋を進みました。当然自分では、主 脈の尾根筋のど真ん中を歩いているつもりでいました。ところが、そのまま 進んだところ、とんでもないところに出てしまいました。道は行き止ってお り、そこから下を覗き込むと、かなり急峻な坂だったのです。 下ってる!?すぐに、「間違えたかも!」と叫びました。 下りようと思えば下りられるけど、そんな箇所地図にはなかったはず。 おかしい! すぐにGPSで現在地を確認してみると、やはり進行方向とほぼ逆向きに立っ ていました。 すぐにGPSを頼りに来た道を戻ると、トラロープの先に尾根のピークを巻く ように付けられた登山道があるのをNちゃんが発見。どうやら、尾根筋の ピークを挟んで反対側の道を巻きつつ歩いたせいで、進行方向を間違えたよ うです。 ふーーーー!!危なかった!! あそこを勢いで下っていたらと思うと、急に背筋が凍ります。やはり、地形 を読むって、本当に難しいものです。 しかし、何とか危うい局面を乗り越え、ついにノーマルルートの標識がある 蕎麦粒山山頂直下の分岐までやってきました。 疲労のたまった足をゆっくりと進めながら、とうとう念願の蕎麦粒山 (1,472.9m)に到着です!!! 当然の事ながら、ガスに包まれ視界はゼロ。しかし、前々から登ってみたか った蕎麦粒山にようやく登れたことで感慨もひとしおです。 本当なら、ゆっくり山頂を楽しみたいところですが、天候が心配だったこと もあり、急いでお昼をお腹に詰め込んで、すぐに下山開始となりました。 いろんな人のブログにあった通り、山頂から日向沢ノ峰までは防火帯となっ ていて、平坦で開けた登山道が長く続いています。晴れていれば、遠くの景 色も楽しめたと思いますが、霧の中の道もこれはこれで幻想的で美しい! 前半の過酷な登山道とは裏腹に、緩やかに続く癒しの道で大分心も落ちき、 踊平まであっという間に着きました。これで登山道とはおさらばで、あとは 長い長い林道を一気に歩くだけです。何も考えずに、ぶらぶらと歩ける事は ラクチンですが、この林道、死ぬ程長い!!! Nちゃんとの会話があればこそ耐えられましたが、二度と歩きたくないと思 う程の長さでした…。 ついに振り出しの川乗橋バス停に戻って来たのが14時半。殆ど休憩もして いないのに、8時間もかかってしまいました。 久々ロングルートとなり、歩きがいのある過酷な山行を二人で労いながら、 バスを待ちました。すると、私達の到着を待っていたかのように、みるみる 天候は悪化。雨はかなりの本降りに…。 いや〜寒いし、辛いし、今回はまさに修行登山となりましたが、Nちゃんに も一緒に地図を見てもらい、かなり精神的に支えられました。 途中一瞬迷った際に落ち着いて行動ができたのも、Nちゃんのおかげです。 おそらく冷静さを欠いていたら、あの尾根を下ってしまい、シャレにならな い事態に陥ったかもしれません。本当に、ありがとうございました!! 今後もこの調子で、難しいルートに挑戦すべく頑張ります。 【今回の蕎麦粒山登山記録】   行動時間 7時間55分  6:30 川乗橋バス停 7:24〜29 740m 54 8:00〜8:06 1,093m  31 8:33〜40 笙ノ岩山(1,254.6m) 29   9:50〜9:55 1,339m  1’10 10:19 巻き道分岐 24   10:28〜11:00 蕎麦粒山(1,472.9m) 9 11:22 桂谷ノ峰(1,400m) 22   11:45 分岐 23(40)   11:47 日向沢ノ峰(1,356m) 2(5)   12:18 分岐 31(20)   12:23 林道終点 5   14:25 川乗橋バス停 2’02


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