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執筆者の写真junpei

西穂高岳



奥多摩三頭山から中3日、いよいよ西穂高岳に挑戦する日がやってきました。 8月に予定されていたこの西穂高岳。台風の為に延期となったことから、その間にボ ルダリングに2回行き、1ヶ月待ちで満を持しての登山となりました。 メンバーは最終的にいつものKさんと二人。 北アルプスの中でも、この西穂高〜奥穂高岳、更に槍ヶ岳までへと続くこの縦走路は おそらく日本の中でも最も難しいルートなのではないかと思いますが、今回の西穂高 岳はその触りの部分。 今すぐにでもかの有名なジャンダルムや大キレットに挑戦したいと言うKさんは、そ れに見合う技術も体力も持ち合わせたスゴイ方。一方私にとっては、この西穂高岳は かなりの挑戦!! 去年の夏、Kさんと一緒に行った瑞牆山で、鎖場が現れる度にヒーヒー言っていた私 でしたが、あれから1年でこの西穂高岳にやってこられるようなるなんて、自分では 信じられない程の成長ぶりです。 信州山のグレーディングでみても、西穂高岳は体力5難易度Dの上級者コース。 宿泊先の西穂山荘のHPを見ても、 「独標~西穂山頂まではやせ尾根が続く上級者向けのコースです。時期に関わらず、このルートでは相応の経験・技術・体力が必要になります。経験の浅い方は安易に立ち入らないようにしましょう。」 との案内。 こんな私でも行けるのだろうか…??と、不安になっている私に、 「大丈夫だ!」と太鼓判を押して下さったKさんの言葉を信じてこの山行に臨むこと になりました。 さて、今回は遠く離れた北アルプス。しかし、初日は1時間程の登山道を歩くだけで 小屋まで行って終了なので、いつもより大分遅い7:45に出発。 新穂高ロープウェイを乗り継ぎ、いよいよ登山道へ。 わずか1時間程の登山道とはいえ、かなりの急登もありましたが、無事西穂山荘へ 到着。人気の山の為、平日にも関わらず小屋は大にぎわい。 案内された部屋の一番奥側に場所を頂き、とりあえず布団一枚分は確保されるらしい ので、比較的快適な居住空間!しかも、小屋もトイレもお布団もかなり奇麗で、そこ は一安心。 夕食まではビールで乾杯しつつ、雑誌をめくり、雑談。そしておいしい夕食を食べた 後は、書庫から懐かしの漫画を読み、消灯より早目の20時には寝床に入りました。 翌朝は4時起床、5時出発でまずは西穂高、独標を目指します。 この、山荘から独標までの登山道は穂高の入門コースとも言われていて、初心者でも 登れる山なのですが、問題はその先です。 主峰(西穂高岳)から独標までは全部で10のピークがありますが、全て岩稜帯。し かも、斜度はかなりのもので、道幅も狭く、切れ落ちているところも多数あります。 独標からコルに下りる斜面はそれまでの雰囲気とはガラッと変わり、いきなりの瘠せ 尾根。ジグザグの道の両端は、見事に切れ落ちており、緊張度は否応無しに高まって いきます。注意しながら先へと進み、難しいながらも、順調に9峰へと到着。 9峰まで来ると、次の8峰(ピラミッドピーク)がすぐ近くに見えます。 が、しかし。この9峰から8峰までの間に最大の核心部が待ち受けていました!! コルへ下りる少し手前の一枚岩を左にトラバースするのですが、この一枚岩、完全に 切れ落ちています。鎖もなし。おそらく滑落したら、数百mは落っこちるのでは…? というような場所。しかも、足場はわずかつま先が乗せられる程の15㎝位のくぼみ だけしかありません。 Kさんが先行しますが、Kさんの口からも珍しく「こーれ、ヤッベーーゾ!!!!」 との言葉が吐き出されました。 私も、なるべく左から下側は見ないようにして、しっかりと手がかりを確かめ、幅 1m以上はあるのではないかと思われる小さな足場に向かって、思い切って左足を伸 ばし、大きな岩をカニ歩き状で渡っていきます。 …フーーーー!!!なんとかクリアしました!! こんなに危ない箇所があるというのに、鎖が付いていないことが不思議な程の岩場の 数々ですが、Kさんの話によれば、非常に雷が多い地域なので、鎖は最低限しかつい ていないとのこと。なるほど、致し方ないのかもしれません。鎖のない難しい岩稜帯 故の、上級者コースたる所以なのでしょう。 一番の難所である一枚岩をクリアした後は、ガレ場を通り、ピラミッドピークへ。 ここからは、西穂高岳、ジャンダルム、奥穂高岳、吊り尾根、前穂高岳が見えてお り、素晴らしい景色!! 続く7峰は、最初で最後の鎖が登場。しかし、これはピークに向かって付けられた鎖 ではなく、トラバース用に付けられたもの。相変わらず足場の狭い岩稜帯ではありま すが、この鎖のおかげで相当の安心感。鎖のありがたみをしみじみと感じる瞬間で す。 そもそも、鎖を有り難いと感じること自体、去年の私には予想だにできないこと。 本当に、変われば変わるものです。 小さめの6峰を越えると、5峰、4峰は巻く形で進み、片側が完全に切れた3峰を越え ようやく2峰へ。いよいよ主峰西穂高岳が目の前に見えます。 しかし、やっぱりまだまだありました!山頂までの斜面は、まるで垂直の壁!! 勿論鎖はありません。とにかく攀じ上るしかありません。3点確保で着実に登ってい きます。 …!!着きました!!主峰、西穂高岳(2,909m)です! 槍ヶ岳から穂高、笠ヶ岳、焼岳から乗鞍岳がすぐ近くに見えています。 遠くには、八ヶ岳。そして、富士山。そのとなりにはこの間登ったばかりの甲斐駒ケ 岳と仙丈ヶ岳。そのとなりには北岳、間ノ岳等々、絶景が広がっています。 暫く景色を楽しんだ後、今度は下山に向けて出発です。下山の方が何倍も難しいので 細心の注意が必要です。気を引き締めて下りなければいけないと思いつつ、下ってい た矢先でした。まだいくらも行かないおそらく2峰あたりからの岩場で、右足が岩に 引っかかり、滑落しかけてしまったのです。一瞬ふわりと体が宙に浮き、山側の大き な岩に左足を強打、おそらくその時に足をひねり地面に着地…という恐ろしい状況で した。始めは痛みのあまり、うずくまったまま動けず、もしや骨折したんじゃ?!と 思う程の痛みでしたが、暫くして痛みがだんだん引いたので立ち上がり、とりあえず 邪魔にならない場所へ移動。すぐさまKさんが鎮痛薬を塗ってくれて、歩けるかどう か心配してくれました。痛みはあるものの、なんとか歩く事はできそうだったので、 とりあえず左足をかばいながらゆっくり下山開始です。 気をつけていても、やはり何か不測の事態が起きてしまうのが登山なのかもしれませ ん。こういう時の為にやはり色々なものを用意していないとダメだなぁと、勉強させ られました。一番失敗したと思った事は、いつも必ず持って来ていたストックを今回 に限って、持ってこなかった事。ないおかげで、かなり難儀しました。 Kさんが膝サポーターを貸してくれたので、何とか下山できたものの、もし最悪の場 合骨折等した場合はそれだけではおそらく歩けないでしょう。 ストックがあれば何とか下山できるかもしれないし、添え木として使う事もできるの で、使わなくても持参すべきアイテムだなぁ。と、つくづく感じました。 怪我のせいで大分ペースは落ち、また、小屋から登ってくる人がどんどん増え、登山 道が狭い事から待たされるシーンも多くて、時間をロスしつつの下山でしたが、予定 よりは早い時間に小屋まで戻ってこられたのでとりあえず一安心。 西穂山荘で有名なラーメンを昼食に頂き、あと残り1時間を気合いで下山しました。 なんとか足の方も、下山に耐えることができてホッとしました。 しかし、これだけで済んでほんとに良かった…。やはり、登山は色んな意味で危険 です。しかし、これからの登山に生かす事の出来る貴重な経験だったとも言えるので 反省しつつ、精進したいと思います。 今回は、私にとっては大チャレンジの西穂高岳でしたが、なんとか無事に帰ってくる ことができたのも、Kさんが始終注意喚起し、励ましてくださったおかげです!! 本当にありがとうございました! これからも着実に努力を重ねて、次なる山へ挑戦していきたいと思います。 【今回の西穂高岳登山記録】   初日行動時間 1時間2分(標準タイム  1時間30分)  二日目行動時間 7時間55分(標準タイム 6時間10分)    5:05 西穂山荘 5:24  丸山 〈19〉 6:04 独標  〈59〉 1’18(1’30) 6:55 ピラミッドピーク 〈51〉 7:43〜8:10 西穂高岳(2,908.8m) 〈48〉 1’39(1’30) 9:14〜9:24 ピラミッドピーク 〈1’04〉   10:03 独標 〈1’04〉 1’57(1’10) 11:24  丸山 〈59〉    11:30〜12:05 西穂山荘 〈26〉  1’27(1’00)   13:00 西穂高口 55(60) ∴ 百名山記録 19/100   【丹沢山 奥白根山 筑波山 草津白根山 四阿山 浅間山    金峰山 瑞牆山 火打山 妙高山 大菩薩嶺 鳳凰三山    谷川岳  蓼科山  雲取山 八ヶ岳 常念岳 仙丈ヶ岳 甲斐駒ケ岳】


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白谷小丸

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