忙しい日々が続く中、次なる山は東京の最高峰「雲取山」です。 百名山のひとつでもあるし、以前から行ってみたいと憧れがあったものの、日帰りコースとして はかなりハードな為敬遠していた山でした。 今月3度目に予定されていたヤバヤバな山二子山が雨の為敢えなく中止となり、梅雨時期の登山の 難しさを痛感しながらも、今回のこの雲取山は、一緒に行くNちゃんが前乗りしてくれることも あって、余程の悪天候でない限り決行!ということで意見が一致しました。 とは言え、女子二人きりでの登山で山小屋泊は初めての事。 雲取山はどのルートもかなりのロングコースとなることや、稲村岩尾根に至っては、奥多摩三大 急登とも言われているかなり険しい尾根らしい。とかなり不安がありました。 さて、色々悩み考えあぐねた結果、鴨沢ルートで入り、翌日は七ツ石山、鷹ノ巣山と縦走した後 稲村岩尾根を使って日原へと下りるコースに決定。しかし、二日目に設定した稲村岩尾根を雨の 中歩いても本当に大丈夫なのか一抹の不安はあり、最悪ビジターセンターの人に勧められた浅間 尾根で下山し、タクシーを呼ぶ事も選択肢のひとつに入れました。 登山初日は、私が家から最速で奥多摩駅に到着できるのが7時半ということもあり、なるべく早目 の行動をとるため、タクシーで登山口まで行く事になりました。 羽村から電車に乗って来たNちゃんと合流し、奥多摩駅に来てくれていたタクシーに乗って、 鴨沢登山口である小袖乗越へと向かいます。鴨沢バス停からは30分程のところまでタクシーで 行けるので、有り難い限り! 一見怖そうな風貌の運転手のお兄さんでしたが、色々話していると登山が趣味のご様子。 仕事柄連続したお休みは取れないとの事でしたが、奥多摩の山々はかなり登っているそうで、か なり登山道にも詳しいので、そんな山話にも花が咲きました。 そこで、今回のルートを相談してみると、稲村岩尾根は是非登りで使って欲しいとのこと。 鷹ノ巣山経由で下山するのなら、石尾根を使って奥多摩駅まで歩くルートが良いと教えてくれま した。鷹ノ巣山を超えると樹林帯となるので、そんなに雨も当たらないし、バスの時間を気にす ることもない。しかも登山道は歩きやすく、高尾山〜陣馬山の縦走路と雰囲気が似ているとか。 そもそも時間がかなりかかることから、私の頭の中からは完全に除外されていたルートでしたが お兄さんの話を聞いて、稲村岩尾根より危険度が少なくていいかも!と思いました。 Nちゃんと相談した結果、お兄さんの言う通り石尾根ルートで下山することが決定。お礼を言っ てタクシーを下りました。 かなり良い天気の中、いよいよ登山開始です。 奥多摩の山々は、いきなり急登というパターンがかなり多いのですが、この鴨沢ルート、意外に 緩やかな始まりです。しかも登山道は歩きやすく危険箇所もありません。どちらかと言うとかな り易しい道です。 ずっと樹林帯で特に目立ったポイントもなく、淡々と登って行くと、第一のポイント堂所にあっ けなく到着。なかなか良いペースで来ているようでした。地図上では堂所からが段々険しくなっ ていくとの認識があり、やはりここを過ぎると急坂が増えます。登り進むと、七ツ石小屋へと 到着。狭い小屋で、お部屋も一つしかなく、完全に雑魚寝しかできないであろうことが推測でき ました。ここはなかなか玄人向けの小屋だなぁ…と思いながら、その部屋に隣接した土間を覗く と、小屋のご主人であるお兄さんが優しい笑顔で迎えてくれました。癒されます。 お手洗いから帰ってくると、Nちゃんがおじいさんと話していました。 細身の体格で、ロン毛にニット帽を被り、ラジオからジャズを流しくつろいでいるなんともいい 雰囲気の素敵なおじいさんです。 「ここはいい小屋だよ。景色もいいし、星も見えるし、水場も近い。トイレもきれいだしね。」 どうやらテント泊をされていたらしく、小屋のご主人ともツーカーな感じからも常連さんなのか もしれません。 色々お話している中、不安に思っていたルートの事等を相談してみると、このおじいさんも タクシーの運転手さんと同じルートをおすすめしてくれ、更に色んな情報を教えてくれました。 また、七ツ石小屋まで2時間程で到着したと言うと、 「十分健脚だからあと2時間で山頂へ着くよ!」 と言って下さったので、その言葉をお守りに、予定を変更して一気に雲取山を目指す事に決め ました。 天候は段々悪化の一途を辿っているため、なるべく早く山頂へ着いていたい。その気持ちもあっ たのか、七ツ石小屋からの急登もかなり頑張って登って行くと、あっけなく雲取山(2,017m) へ到着してしまいました。 私が予定していた時刻より2時間も早く着いてしまったことになります。 標準タイムから言っても、20分も巻いていました。 ゆっくりとお昼ご飯を食べ、一瞬でも富士山が雲の中から顔を出さないかと大分粘ってはみまし たが、一向に天気が好転する気配もなく、1時間ほどしてから、敢えなく雲取山荘へと向かいま した。 都心から近い百名山で人気もあるこの雲取山ですが、この日山頂までに出会った登山者は数人 で、私達が長居していた間も頂上はほぼ貸し切り状態。 平日でしかも雨予報だと、人気の雲取山と言えどさすがに来る人もいないのかもしれません。 20分程で小屋に到着。立派な建物が眼下に見えました。しかし、人気は無く、閑散としており、 もしや、今晩私達だけか…??という懸念すら湧いてきました。 巷のブログや健脚Sさんの話だと、雲取山の主人はかなりコワイ人らしく、あまり評判が良くない ので私達二人はかなりびびりつつ、入念に靴の泥を落とし、ストックも一旦外に置いて様子を窺 いながら、中へと入ります。 出て来たのは若いお兄さん。アルバイトか…?と思いつつも手続きしていると、下山路を問われ たので、一応決定したばかりの石尾根ルートと、当初の稲村岩尾根のルートの比較を聞いてみた ところ、「さあ、どうですかね」程度の答えしか返ってこず、しかも石尾根を使う人も少ない的 な事まで言われてしまい、下山についての話をそれ以上ふくらませる勇気はありませんでした。 その後小屋の人に怒られないように、こっそり水場で靴とストックを洗い、こわごわ自分たちの 部屋へ上がろうとする頃から、ポツポツ登山者が来始めました。 部屋についてみると、豆炭こたつが置いてあり、もぐるとあったかい!! ビールを買い、こたつに入って二人で乾杯♪幸せです。 夕食の前に小屋の外で雨の無い景色を堪能している時、Nちゃんが鹿を見つけました。 数頭の群れで、カワイイ。でも、翌日山頂直下の登山道脇にあった網にクビをひっかけ死んでい る鹿を二人は見ることになるのですが…。あの時見た鹿の1頭だったのかもしれないなぁ…。 夕食のお呼びがかかったので、食堂に行ってみると、私達含め3組程しかお客さんはいなくて、 もう一組の女性グループはベテランらしく自炊。食べている間、実は小屋のご主人だったお兄さ ん(代替わりしてお父さんから引き継いだらしい)がずっと見守るという微妙な感じだったけど 実はシャイなだけでほんとは優しい人なのかも。 消灯の時間まで、小屋にある本を読みつつ過ごし、眠くなったので消灯より前に電気を消し、 こたつに足を突っ込んで就寝。 途中何度か激しい雨音で目覚めつつも、なんとか眠る事ができ、4時半に起床。 祈りの甲斐もなく天気は予報通り雨。昼過ぎからは雨が上がる予報とはいえ、かなりの本降り。 一足先に出かけた自炊組の女性二人に下山ルートを聞いてみると、鴨沢とのこと。 途中屋根のある休憩所もあるし、バス停も屋根付きで、最悪バスがなくても濡れて待っているこ ともないし、一番無難だからとの答え。一応、石尾根が難しいルートではないことはここでも言 われたので、小屋を出るときは、一応石尾根経由の下山で行くと改めて意志を固めました。 準備をしている間も、小屋のお兄さんはずっと後ろで見守るように立っており、挨拶をして出よ うとすると、きちんと「お気をつけて」の言葉も。 愛想が良いとは言えないけど、本当は心優しいご主人なのでしょう。お世話になりました。 さて、雨はかなりきつく、雲取山山頂についても当然の事ながら何も見えません。 早々に先を進みます。登山道には水が溢れ、昨日とは打って変わってかなりの悪路です。 避難小屋を越え、奥多摩小屋で暫し休憩です。 ここまで歩いている最中、私が考えていた事は、 この雨はヤバい。おそらく二人とも、石尾根で下山することが不可能ではないだろう。しかし、 ウエアが濡れ、かなり体力的にも精神的にも疲弊するだろうし、低体温症にもなりやすくなる。 よって鴨沢ルートに変更が無難かも。 ということでした。 本当なら、せっかくやってきた雲取山。鷹ノ巣山も行きたいし、鴨沢ピストンはつまらない。 というところでしたが、雨の強さが半端じゃありません。この状態ではどんどん道は悪く歩き にくくなるし、この時点ですら雨が沁みているのか、汗で濡れているのかわからないくらい、 かなりウエアが湿ってきていました。 奥多摩小屋で荷物を降ろし、開口一番ルート変更を提案すると、Nちゃんはちょっと驚いた様子 でした。 以前根子岳登山の際、大雨で登山道が沢のようになったさなか下山した経験を持つ私達二人でし たし、二人とも根性だけは十分持ち合わせているので、行こうと思えば行けるとは思いました が、どうせ鷹ノ巣山へ行った所で何も見えないし、そこで引き返そうと思ってももう遅い。 七ツ石小屋で会ったおじいさんの話でも、鷹ノ巣山から数本ある下山路も道迷いしやすいルート しか残されていないとの話もあったし、決断するなら今しかない。と考えたわけです。 Nちゃんは、驚きつつもすぐに同意してくれたので、早速七ツ石小屋目指して下山です。 小屋に着くと、一足先にでたベテラン二人と遭遇。結局こっちに決めたと話すと、小屋のご主人 もこんな日は早く下山した方がいいと言っているし、天候も悪くなる可能性もあるから。と、 鴨沢ルート選択を肯定する口調。やっぱり、これで良かったのだ。と一安心。 Nちゃんがバス時刻を調べている間に、GPSアプリを設定し直し、いざ出発です。 しかし、バスの本数は懸念した通り殆どない状況。直近のバス時刻を過ぎると2時間以上次のバ スはありません。何としても、そのバスに乗りたい!! が。しかし。標準コースタイム(ノンストップで2時間5分)で下りないと、絶対間に合わないと いう時間。 七ツ石小屋が8:20。鴨沢バス停発が10:15。実は2時間を切っている…。果たして間に合うか? 二人を追いかけるようにそこから大急ぎで下山です。 途中、分岐のところで追いつき、私達が先行する形で下りましたが、さすが健脚どんどん追い つかれてきます。堂所で、二人に先行してもらい、何としてもこの二人について行こうと決意。 何も言わず、後ろから聞こえてくる足音でNちゃんもついて来てると確認しつつ、黙々とまるで トレランのように小走りで下りて行きます。 しかし、二人とも本当に速い!!遅れまいとついて行くだけで必死です。汗が噴き出し、顔から したたるのが汗なのか雨なのかもわからないまま、とにかくものすごい勢いで下りて行きまし た。 途中、二人が休憩で脇道にそれた後も、後ろを振り向き、「休憩、いいよね?行っちゃうよ。」 とNちゃんに確認し、そのままのペースを崩す事無く一気に小袖乗越までやってきました! しかし、ここから鴨沢バス停までの20分がまたかなり険しく、バスに間に合うか間に合わないか 不安と戦いながらようやくバス停へ到着しました。七ツ石小屋から鴨沢までは標高差およそ 1,100m程とかなりのボリューム。しかし、結果的に到着時刻はなんと10時!! 標準コースタイム2時間をかなり巻く1時間40分という速さで到着したことになります。 後から例の二人も到着し、4人は無事にバスに乗る事ができました…!! 鷹ノ巣山への縦走もできず、鴨沢ピストンとなってしまった今回の登山でしたが、この下山の頑 張りようは誇っていい程のものだったと心の底から思います。 Nちゃん、私達、ほんとによく頑張ったね!! さて無事に奥多摩駅へ着いた後、私達は沢井駅に立ち寄り澤乃井で〆、帰路へとつきました。 今回女子二人だけの不安いっぱい登山にお付き合いしてくれたNちゃん、本当にありがとうござ いました!! 稲村岩尾根と石尾根は、次回お天気最高の雲取山リベンジにとっておきましょう。 今回も記憶に残る、ハードかつ楽しい山行でした!! 【今回の雲取山登山記録】 初日行動時間 6時間3分(標準タイム 5時間10分) 8:22 小袖乗越 9:40 堂所 1’18(1’45) 10:45 〜11:00 七ツ石小屋 1’05 11:30 ブナ坂 30 12:01 奥多摩小屋 31(40) 12:53 避難小屋 12:57〜14:00 雲取山(2,017.1m) 56(55) 14:25 雲取山荘 25(20) 二日目行動時間 3時間50分(標準タイム 4時間5分) 6:10 雲取山荘 6:34 雲取山 24(30) 7:17 奥多摩小屋 42(35) 8:20 七ツ石小屋 57(50) 10:01 鴨澤バス停 1’41(2’05) ∴ 百名山記録 15/100 【丹沢山 奥白根山 筑波山 草津白根山 四阿山 浅間山 金峰山 瑞牆山 火打山 妙高山 大菩薩嶺 鳳凰三山 谷川岳 蓼科山 雲取山】