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執筆者の写真junpei

ついに登頂〜剱岳〜



その姿を初めて見たのは、唐松岳に登った時でした。

ゴツゴツした岩が幾重にも重なり、その峻険な山容は圧倒的な存在感で胸に迫ってきました。

「カッコイイ…。」

思わずそう呟いてしまう程。

それ以来、いつの日か剱岳に登りたい。と思うようになりました。

新田次郎の「剱岳 点の記」は勿論のこと、映画も何回も見返す程。

しかし、剱岳はノーマルルートの中では国内最難関と言われ、滑落等による遭難も多いところです。やはりある程度技術がなければこの山には登れません。

昨年薬師岳に登った時に「来年は剱岳に登りたい。」と、Nちゃんに話しました。

コロナで明らかに自身の体力が落ちていることを実感していた為、技術云々で躊躇しているうちに剱岳に登れなくなるのではないかと思ったからです。

最初は戸惑っていたNちゃんでしたが、最終的には承諾してくれ、戸隠山、二子山とトレーニング登山も無事に終了。

そしてついに「その日」は、やってきました。


仕事終わりで富山へ前乗りし、二人でプチ宴会。翌朝バスで室堂へ入りました。

まずは立山玉殿の湧水をプラティパスに詰め、みくりが池方面へ。

立山連峰の左端にほんの少しだけ剱岳の頂が見えていますが、ここから見る剱はまだまだ遠目。





翌日泊まる予定の雷鳥荘を横目に雷鳥沢キャンプ場への階段を降りていきます。こんなに景色の良いところでキャンプするのも楽しいだろうなぁ。等と会話しながら浄土沢にかかる橋を渡るといよいよ登山道に突入。ここから別山乗越までは500m弱の急登です。

順調に高度を上げ、別山乗越へ到着。ここでお昼を食べ、剱沢を経て剣山荘へ向かいます。だんだんキャンプ場が見えてくると同時に、剱岳が正面に見えてきました。近い!!





その威圧感は人を寄せ付けないオーラを放っているようで、空恐ろしいほど。本当にあんな山、登れるんだろうか!?と不安になってきます。そこから20分程歩くと、この日の宿剣山荘が見えてきました。

こんなに標高の高いところなのに、お水が豊富だからなのかトイレは水洗で、しかもシャワーが使えるという素晴らしい小屋です。荷物整理をし、シャワーを浴びてさっぱりした後はビールで乾杯。その後夕食を頂きますが、窓の外に聳え立つ前剱を眺めながら食べていると、だんだん不安が増してきました。不安の種は、岩場をうまく通れるかどうかは勿論のこと、トイレが少ないことからお腹の調子が悪くならないか等々。夕食後は翌日に備えて寝ることにしましたが、緊張と不安でなかなか寝つけませんでした。3時に起床。準備をし、予定通り4時に出発しました。

大方の人が4時に出発すると聞いてはいたものの、歩き始めると予想以上に人が連なって歩いていました。一服剱から再び歩き始めますが、どうやら渋滞の原因らしき人たちの真後ろになってしまったようです。7,8人の高齢の方が大半のグループで、鎖場に来るとかなり動きが遅い。道幅も狭く、追い抜くことは不可能で、当然渋滞も想定内のことではありましたが、この人たちのおかげで、どんどん渋滞はひどくなっていきました。やはり、これだけの大人数で歩く場合は、尚更自分達のペースが如何程か考え、道を譲るのがマナーというものでしょう。しかし、こちらが指摘するわけにも行かず、後ろを付いていくしかありませんでした。

いよいよ前剱が近づいてくると、3番鎖場です。前剱大岩の左脇を抜け、更に4番鎖場を過ぎ、稜線を進むと前剱山頂へ到着。ここに来てようやく剱岳の全貌が見えるようになります。ものすごい迫力です。




一旦斜面を降りると、最初の核心部ブリッジが見えてきました。

断崖絶壁に付けられた1本橋です。長さは数mですが、手すりはなく、風が吹いていたら相当に恐怖を感じるであろう場所です。しかし、渡ってみるとそれほどの怖さはありませんでした。





ブリッジを過ぎるとすぐに5番鎖場が出現。断崖絶壁のトラバースです。しかし、足場がしっかりしている為、ここも難なく通過。6番はかなりの斜度の下りの鎖場ですが、ここも難なくクリア。ここから暫くは稜線を歩いていきます。続いてやってくるのが、7番鎖場平蔵の頭(ズコ)。ほぼ垂直に切り立った一枚岩の岩壁を登って下るのですが、なかなかの高度感です。8番鎖場を越えると、ついに9番鎖場にやってきてしまいました。別山尾根ルート最大の難関カニのタテバイです。

渋滞の原因だったグループが、ここにきてようやく道を譲ってくれました。後ろにいた若い人たち、そして屈強そうなおじさまに先に行ってもらうことにし、その後に私たちも続きます。

取り付きで前の人から少し離れて登攀開始です。約20mのほぼ垂直の岩壁を登っていきます。休むことなく、次々と登っていくと、最後の難しそうな部分(垂直の鎖場で、足場用に鉄杭が打ってある)が現れました。あれ??もう終わり??と思ったら、本当に終わりで、案外あっさりとタテバイは終了してしまいました。

そこから一旦斜面を下ると、大きな岩に挟まれた鎖場が出現しました。足場がない為、2人前を行っていた単独行の女の子が難儀しているのが見えました。すると、後ろにいた屈強そうなおじさまが、女の子の靴を下からぐいっと支え上げ、助けていました。スゴイ!!ほんまもんのヤマヤ!という感じでした。その女の子を支えてあげていたおじさんは、左側の岩の腰の位置辺りに入ったわずかなクラックに足をかけ、いともたやすくその難所をクリアしていました。

なるほど、ああやって行けばいいのね。と、私も真似してみましたが、この岩がツルツルしていて、まったく足がひっかかりません。もうひとつ先にあったクラックで行けるか試してみましたが、ここもダメ。

「どうやって行けばいいんだ!?」と声を出しながら、今度は左足をかけ、同時に膝を岩に押し付けたまま、右腕一本で無理くり体を上に持ち上げ、なんとかクリアすることができました。Nちゃんもなんとかクリア。こんな箇所があるなんて、どの動画にも出ていなかったので、少し驚きましたが、腕力のある男性からしてみれば、取るに足らない鎖場なのかもしれません。

さて、ここを過ぎると暫く稜線歩きが続き、山頂の祠が見えてきました。





剱岳山頂(2,999m)に到着です!!念願だった剱岳の山頂に、ついにやってきました!!

残念ながら、初めてこの山を見た唐松岳は雲の中で見えませんでしたが、素晴らしい景色が広がっていました。

暫く山頂を楽しみますが、大喜びはできませんでした。


なぜなら、最大の核心部が控えていたからです。意を決して、下山開始です。いよいよ下りようという時に、男性2人も下山開始しようとしていました。先に行ってくださいとお願いすると、「遅いですよ」との返事。「カニのヨコバイ」が不安なので、誰かに先行して頂いた方が精神的に楽なんです。と言うと、なるほど。とのお答え。暫し歩きながら、ヨコバイの話をして一緒に歩きました。

いよいよ10番鎖場の看板が見えてきました。ここから数m下がると、最大の核心部がやってきます。何故最大の核心部なのか。

それは、トラバース一歩目の足場が隠れていて、上からでは見えないからなのです。

その最初の一歩さえ見つかれば、あとはただ真横に鎖を頼りに進むだけ。しかし、その1歩がきちんと見つかるかどうかが本当に不安で、登った方に聞いてみたり、散々動画もチェックしました。先行したおじさまが、例の隠れたステップに立ち「楽勝やん!」と言っていました。見ると、ステップを指し示す赤の矢印部分から30cm程下に足を突っ込んで立っていました。なんと!そんなに近くにステップがあるのか!とかなり驚きでした。

2人目のおじさまがそこへ続き、いよいよ私の番です。岩から体を離すと、赤丸のついたステップが見えました。なるほどあそこか。と、思い、慎重に左足を下ろしていくと、おじさまは丁寧に、足場の状況を教えてくださいました。続いてNちゃん。今度は私が足場の状況を伝え、無事にステップを踏むことができました。思った以上に足場はしっかりしていて、完全に足がすっぽりと隠れるくらいのスペースがありました。

そのまま数m真横に進み、最大の核心部カニのヨコバイは終了しました!

今度は、長い梯子を下ります。こちらも慎重に下りていきます。






続いて鎖場が出現です。番号は付されていませんが、この鎖場は少し難易度が高く思えました。

足場があまりなかったので、少し怖かったのですが、無理矢理フリクションやつま先立ちで通過しました。

次に11番鎖場平蔵のコルを下り、続いて12番鎖場平蔵の頭(ズコ)です。ここは一枚岩をまず登り、そして垂直の鎖場を下りてくるのですが、ここはタテバイヨコバイよりも緊張しました。

そして最後の13番鎖場です。ここを登り切ったところで、先行していたお二人が休憩していたので私たちも一緒に休憩し、いろいろお話をしました。

本当にこのお二人がいてくださったから、安心してヨコバイを通ることが出来ました。お二人は三重から車で7時間かけて扇沢まで来て、眠らないまま登ってきたとのこと。60歳の記念に剱岳に登り、これを最後に危険な山は卒業とのことでした。

これを過ぎれば難易度の高い鎖場はないので、ゆっくりかつ慎重に下山し、ついに剣山荘まで戻ってきました!!万歳!!ここでデポしていた荷物を整理し、お弁当を食べ、別山乗越へ向かいます。帰りは剣沢を通らず、巻道を通ることにしました。小屋のお姉さんが教えてくれた通り、大きな岩や石がゴロゴロしている道なので、少し歩きにくいところもありますが、若干こちらの方が楽なようです。

途中で休憩をしていると、なんと雷鳥親子が現れました!!子供たちはピヨピヨ言っていて、可愛らしい限りです。








雷鳥が現れたということは、天気があまり良くないということですが、やはりその通りで、別山乗越を越えると雨が降り出しました。かなり大粒の雨だったのでレインウエアを着込み、下りていきます。途中、雷まで鳴り出しました。これは大変!!と急ぎ気味に下り、やっと雷鳥沢キャンプ場に到着しました。しかし、ここからが最後の試練でした。宿までかなりの階段を登らなければなりません。

こんなにあったっけ!?という程階段が続き、本当に辛い辛い階段を上り終え、この日10時間強という行動時間を経て、剱岳登山は無事に終了しました!!

温泉で疲れを癒やし、ビールで乾杯!!

美味しいお食事を頂いて、20時頃就寝となりました。

翌日、立山連峰とちょこっと顔を出した剱岳に別れを告げ、帰路につきました。

なんだか、本当にあんなにスゴイ山に登れたのか!?と実感がまだ湧かないのですが、我ながらよく頑張ったと思います。

これも、トレーニング登山でお世話になったKさんや、一緒に登ってくれたNちゃんのお陰です。

本当にありがとうございました!!

また次なる山に向けて頑張りましょう!!

【参考動画】







【今回の剱岳登山記録】    

初日行動時間 4時間3分(標準タイム 3時間35分)  

■山行タイム 3時間23分

9:15 室堂 

9:25 みくりが池 10(10)  

11:32~11:58 別山乗越 1'07(1'20)  

13:23 剣山荘 1'25(1'00)


二日目行動時間 10時間28分(標準タイム 9時間10分)

■山行タイム 7時間13分

4:05 剣山荘

5:29 前剱 1'24(1'30)  

7:12〜7 : 58 剱岳 1'42(1'40)  

8:56〜9 : 18 前剱 58(1'30)

10 : 37〜10 : 54 剣山荘 1'19(1'10)

13 : 06〜13 : 15 別山乗越 2'10(1'30)

14 : 33 雷鳥荘 1'18(1'50)

 

∴ 百名山記録 47/100   【丹沢山 奥白根山 筑波山 草津白根山 四阿山 浅間山   金峰山 瑞牆山 火打山 妙高山 大菩薩嶺 鳳凰三山  谷川岳  蓼科山  雲取山 八ヶ岳 常念岳 仙丈ヶ岳  甲斐駒ケ岳 赤城山 男体山 岩木山 富士山 美ヶ原 北岳 両神山 鳥海山 霧ヶ峰 那須岳  至仏山  安達太良山 木曽駒ケ岳 御嶽山 会津駒ケ岳  燧ケ岳 五竜岳 苗場山 平ヶ岳 間ノ岳 鷲羽岳 磐梯山 西吾妻山 薬師岳 乗鞍岳 立山 早池峰山 剱岳】



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