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小金沢連嶺〜憧れの尾根を完全縦走〜

更新日:11月11日




念願の笹尾根縦走を達成した2年前。思えば、あの時からぼんやりとこの縦走を考え始めていました。

百名山である大菩薩嶺から小金沢連嶺という長い尾根が滝子山まで続いています。総距離およそ25km、累積標高差上りおよそ1,500m/下りおよそ2,700m。なかなか厳しい山行になるだろうと思いました。


大縦走に絶対必要不可欠な水場は数カ所に点在し途中避難小屋もある為、有事の際はそこに逃げ込めるという安心感がありました。大菩薩嶺にしか行ったことがない為、まずは尾根の途中にある山々を、少しずつ攻略していくことから始めました。

すると、この尾根筋には草原状の広々した景色が広がる箇所が多いことがわかりました。牛奥ノ雁ヶ腹摺山や、大蔵高丸辺りは特にずっとそこに佇んでいたいと思わせる牧歌的な雰囲気があり、とても心惹かれる山なのでした。そうするうちに、より強くこの尾根を繋いでみたいという気持ちが高まっていきました。


何かの折にKさんに話したところ、Kさんも参加したいというお話があり、秋決行ということで日程調整していました。ところが直前になってKさんの腰の調子が芳しくないという事態になり、最終的には単独行で挑戦することになりました。寒くなると諸々危険性も高まっていくこともあり、林道閉鎖になる前の11月上旬をリミットと考え、絶好の天候を選んで満を辞して臨むことになりました。


ツェルト泊ということで、荷物は相当厳選したはずでしたが、最終的には10kgは超えていたようで、肩にずっしりと重みがかかりました。緊張と不安でモヤモヤが止まりません。難しい山や、厳しいだろうと予想される山に行く時に必ず陥る精神状態です。今回は久しぶりのツェルト泊での縦走、そして単独行ということもあり、なかなかの緊張度合であんまり楽しみとは言い難い心持ちでした。


当日朝。始発で塩山駅へと向かい、予約していたタクシーで福ちゃん荘まで。親切な運転手さんで、山事情、道路事情など伺いながら福ちゃん荘へ到着。平日ですが既にかなりの人が山に入っている様子でした。さすが人気の山です。

運転手さんから「お気を付けて」というお守りの言葉を頂き、いざ出発です。

1時間程で雷岩に到着。既に数人のハイカーが休憩していました。さて、何の眺望もない山頂ですが、とりあえず尾根完全縦走の為にも、往復20分で大菩薩嶺山頂を踏みました。いよいよ始まった縦走。多少霞がかかってはいるものの富士山はもちろんのこと、南アルプス、八ヶ岳と素晴らしい展望です。






途中わんちゃん連れの女性の写真を撮ってあげたりして、その女性と暫し会話。楽しい方でした。賽の河原を過ぎると介山荘が見えてきます。大菩薩峠です。ここで大休止。

ふとYAMAPを見ると、なんとGPSが追尾していません。何度も再起動して確かめますが現在地は示すものの、その後すぐにフリーズ。どうしよう…。と焦りますが、復活することを祈りつつ、GPSに頼らず地形図をよく確認し、周りの地形をしっかり見て歩くことに集中しようと決意。先々が途端に不安になり、ここに宿泊してゆったり登山もいいなぁ。とぼんやり考えながら、多くのハイカーが休憩しているのを尻目に先へ進みます。さっきまでたくさんの人たちで賑わっていた登山道も、ここを過ぎると途端に人がいなくなりました。


以前訪れた時にこの道を通っているはずですが、全く記憶がなく、石丸峠までの道は薄暗くなかなかの急登でした。小ピークを越えると視界が広がり、石丸峠の道標が見えてきました。この先小金沢山までは未踏ゾーン。暫くは笹原の続く静かな道が続きます。

西側には南アルプス、そして東側には奥多摩の山々が見えていました。大岳山、御前山、そして三頭山から派生した笹尾根もよく見えていました。





やがて狼平を過ぎると鬱蒼とした樹林帯へと突入。朽ちた倒木や木の根がはびこっていて、歩きにくいことこの上ありません。しかも道がはっきりしない部分もあり、テープや踏み跡をよく見ながら慎重に進みます。相変わらずGPSは止まったまま…。早く知っている小金沢山に着いて安心したい!!という気持ちが高まっていきました。山頂らしきところが見えると、一気に緊張が解放!とりあえず小金沢山までやって来られました。

予定通りここでお昼ご飯。ここまで来れば、宿泊地まであと2時間半くらいの行程です。


ちょうどお昼を終えて歩き出そうとしている頃、若い男性二人組が大菩薩嶺方面からやってきました。もしや私と同じ縦走組か…?と思いましたが、装備はそれほどでもなさそうです。もしも宿泊地でかち合ってしまったら、それはその時か。と腹をくくり、牛奥ノ雁ヶ腹摺山へ。笹原を抜けると、山頂です。やはりここからの眺めは最高です。これから歩いていく南側がずっと見えています。笹原を下り、川胡桃沢ノ頭へ到着。思えば、この間に水場があるはずでしたが、標識もなくどこが水場に降りるポイントだったのか結局わからず仕舞いでした。とりあえず水は1泊分以上残っている為大丈夫。宿泊地まであと少しです。しかし、ザックの重みがここにきて大分効いてきていて、黒岳への登りはかなりきつく感じました。大峠への分岐を分けて、ようやく黒岳へ到着。そこから一旦降り、ピークを登り詰めると白丸谷です。北を除けばほぼ360度の展望があります。笹原の中にもうひとつぽっこりとしたピークがあります。ここが、白谷小丸。不思議と平で、誰かがとある目的の為に整地したのではないかと思うほど。






さて時間も15時を回ったのでツェルトを張ります。

暗くなる前に夕食を済ませようと、アルコールストーブでお湯を沸かし、五目ごはんとサバの味噌煮、お味噌汁を頂きました。しかし、疲れているからか、ご飯が喉を通りません。明日のご飯にすれば良いかととりあえずサバだけをお腹に入れました。だんだん日が暮れてきました。富士山のシルエットが美しく、見惚れます。やがて日が落ち、街の灯りが目立ってきました。この時まだ月は出ていませんでした。






なんと奇しくもこの日は皆既月食。山の上で皆既月食を見られるなんてこと、滅多にないのではないでしょうか。しかも、狙ったわけではなく、たまたまこの日が皆既月食の日だったのです!!ミラクル!!!

思えば私が野営をする日は、満月の日がかなり多かったように思います。2年前単独で笹尾根縦走した時も、月明かりがあって夜も心強く思ったものです。それが今回は皆既月食で、しかも快晴。ある意味導かれたような気がしてなりませんでした。

月が出てくるまでに暫く間があるので、持ってきたイチローズモルトを飲みながら、村上春樹の短編を読んでいたら、それまでの疲労と緊張はだいぶ和らぎ、食欲も出てきました。五目ごはんの残りを食べ、体も温まり、平和な気持ちがようやく訪れました。18時半頃、月の様子を見てみると下の部分から欠け始めていました。19時過ぎ、ついに皆既食が始まり、赤い月が現れました。この日は同時刻に天王星食もあったらしく、皆既月食と惑星食が同時に起こるのは442年ぶりとか。驚くような日に、最高の場所で独り天文ショーを見るなんて、贅沢の極みです。元天文部員がそのショーを事前にチェックしていなかったのはお恥ずかしい限りですが…(笑)





満月の日は星がそんなに見られないものですが、皆既食が始まると満天の星空で、寒さを堪えながら随分長い間星を眺めていました。

その間中しきりに鳴いていたのが、鹿。かなり近くまで寄ってきているようでしたが、姿は見えず。いきなり至近距離で鳴かれた時はさすがにびっくりして声をあげてしまい、向こうもびっくりしていたようでしたが、また声が少し遠ざかると、「はーい。もう近くに来ないでねー。」と暫く会話してました。


皆既食が終わり、戻っていく最中に眠くなってきたので寝ることにしました。しかし、1時間ほどすると、ものすごい風の音で目が覚めました。さっきまで無風だったのに、いきなりの強風です。そして、何だか随分ツェルトの布が顔に当たるなぁと思っていたら四隅のペグがひとつ外れていました。外に出て、周りを探しますが見当たらず、仕方ないので枝を拾ってきて差し直します。ついでに全てのペグの状況を確認し、外れないようにしっかりと埋め込み、ガイラインがしっかりしているか再度確認。バチバチに止まっていたので、おそらく大丈夫だろうと中に入り寝ようとしますが、あまりの強風でツェルトが左右にひしゃげ、バタバタという布の音がうるさくて寝るどころではありません。ここまでの強風の中ツェルト泊をするのは初めてのことです。あまりの風でトレッキングポールが折れるんじゃないかと心配でなりませんでしたが、そんな中でも結構眠れたのが驚きでした。


ふと目が覚めると3時50分。風は弱まることなく吹き荒れていました。本来なら行動開始したいところですが、早く撤収しても真っ暗な中歩くのは少し躊躇われたので、4時半頃までシュラフにくるまり、その後撤収に向けて準備し始めました。おにぎりの残りを朝ごはんにし、着替えをし、荷物をまとめます。5時を過ぎるとうすぼんやりと東の空が明るくなってきました。満月は西の空にまだ浮かんでいる為、比較的明るいと言えるのですが、いきなり急坂を降りていかなければならない為、やはり安全策でもう少し周囲が見えるようになってから歩きたいところです。

撤収がちょうど終わった頃、だいぶ東の空が赤くなってきました。歩いているうちに明るくなるだろうと思い、5時40分野営地を出発。





ヘッドライトをマックスにし、まだ暗い中行動開始です。10mの小ピークを登ると約200mの急な下り坂。暗い為、テープを見失いそうになりながら、ゆっくり確実に歩を進めます。そのうちに段々明るくなってきました。坂を降り切る頃にはヘッドライトも必要なくなり、無事湯の沢峠までやってきました。駐車場には車は1台も停まっておらず、おそるおそる開けた避難小屋にも誰も居ませんでした。荷物を小屋に置き、プラティパスを持って水場まで降りて行きます。じゃんじゃんと言う程ではありませんでしたが、水はしっかり出ていました。ここでプラティパスに水を満タンにし、再度出発です。水だけで3ℓあるので、重量は全くと言っていい程変わっておらず、相変わらずずっしりと重いザック。まだまだ長い行程を歩かなければならない為、若干懸念されるところです。






早速湯の沢峠から大蔵高丸までの登りで既に息切れです。とは言え、この辺りは小金沢蓮嶺の中でも草原状の道が美しい部分。景色を楽しみながら進みます。霜が降りた真っ白な草原に朝陽が差し、キラキラ光っている様は早朝ならではの宝物と言えるでしょう。南アルプスと富士山をお供に、ピークを登り切り、大蔵高丸に到着。ピークも霜に覆われて真っ白。そこからなだらかな草原の中にある二つほどの小ピークを越えると、ハマイバ丸です。続く笹原の小さなピークを4つ程越えると、大谷ヶ丸。ここまで来れば、いよいよ残すところ最後のピークは滝子山を残すのみ。


しかし、ここからがある意味この縦走の中でも緊張を強いられる部分に入ってきたとも言えます。地図には、「踏み跡薄い」との記載が。特に落葉したあとは道が不明瞭になりやすく地形図と実際の地形をよく見て歩かないといけません。事前に調べた感じでは、途中平らな部分があり、ここはロストしやすい部分だな。と感じていました。この日は、GPSがきちんと作動していました。良かった!!まず、大谷ヶ丸の山頂からロストしそうになる部分がありました。道標にはマジックで滝子山との記入。それしか示すものはありません。しかも、その示す方向に道はありません。ですが、薄く踏み跡があるので、そっちに行きそうになります。しかし、正解は三角点より北側に分岐。これは、地図に記載があった為迷わず済みました。


分岐から尾根伝いに50m程降りると、広く平らな部分が現れます。危険な場所です。しかし、地形図を見ると、その平な部分の先に見えている尾根に乗るのが正解のようです。他の支尾根に入らないよう、真正面に見えてくる尾根を目指して進みます。ピンクテープは申し訳程度にしかない為、薄い踏み跡を探しつつ、目標に向かって歩くしかありません。この辺りから尾根に乗るのかな、と思ったところにテープを発見。合っているようです。途中答え合わせの為にGPSを見ると、おおよそ登山道に乗っていました。しっかりと尾根に乗った後は、間違えようがないので安心でしたが、ゆるやかに降っている尾根がこれまた怪しい。幅広のわかりにくい尾根になっていて、一体どこが道なのかさっぱりわかりません。仕方なくGPSで軌跡を辿りながら、ようやく行く方向がわかり、道に乗りました。


地形図からだけでは、正規ルートのすぐそばにえぐれた沢のようなものがあるというイメージができなかったのですが、照らし合わせてみて、なるほど。と思う部分がよくわかりました。やはり地図読みは、まだまだ勉強が必要です。その後も地形図だけでは不安になる部分続出で、その度にGPSに頼り、なんとか最後の登り部分までやってくることができました。もし昨日のような状態だったらと思うと、本当に恐怖を感じました。鎮西ヶ池を過ぎると、残り15分の30m程の急登が待ち受けています。殆ど息切れしながら少しずつ少しずつ登っていくと、初狩からのルートにぶち当たりました。遠くから熊鈴の音が聞こえてきます。ああ良かった!人がいる!そう思うと心強く、ゆっくりゆっくりですが山頂に向けて登って行きます。ついにその熊鈴を付けたおじさまが近づいてきました。挨拶を交わし、先に行ってもらいます。疲労でゆっくりしか登れず、ようやく山頂に辿り着いたという感じでした。北側には、私が歩いてきた山並みが続いており、あそこからずっと歩いてきたんだなぁ。と感慨もひとしおでした。





熊鈴のおじさまから、「どこからですか?」と聞かれたので、大菩薩嶺からと答えると、「湯の沢峠?」と聞かれたのでとりあえずそうだと答えました。「この時間に着くってことは、随分早く出たんですね。頑張りましたね!」と言ってくださり、山頂でひとしきりお話しました。この方も湯の沢峠に泊まったことがあり、この小金沢蓮嶺が大好きでテント泊しようと思ってるというようなことを話していました。良さそうな方だったので、本当の事をお話しして、随分話が盛り上がりました。

その後、私の方が一足先に山頂を後にしました。この滝子山。今回が初ですが、何故今まで敬遠していたかというと、どこから登ってもなかなか登り甲斐のあるコースだったからです。ということは、降るのも勿論大変。単純計算でも1,000mの標高差を一気に降りることになります。等高線は地形図が緑に見えるほど間が混んでいて、その険しさが窺えます。2日間の山行で疲労した足に、最後のとどめを刺されるような恐ろしい登山道。心して降るべく、靴紐をきつく結び直し、いざ出発です。


やはりかなりの急坂です。段々足が痛くなってきました。左足の親指の腹は、おそらく水ぶくれが出来たと思われ、非常に痛みを感じる状態。更にこの2日間に何度か捻った左足首はちょっと角度を変えるとかなりの痛みが走りました。もともと状態の良くない右足の外反母趾部分も、しっかりテーピングをしていたもののやはり限界がきていました。ところどころ休みながらゆっくりゆっくり降り、いよいよ林道まで30分というところに設置されていたベンチで大休止。


すると、元気な熊鈴のおじさまが追いついてきました。ここでも暫くお話しをして、おじさまは先に降って行きました。私も少ししてから出発。そしてようやく林道へと到着!!ここでもう一度休憩を取り、初狩駅の時刻表を調べると、1時間に1本しかない電車に乗り遅れそうな時間でした。急いで休憩を切り上げ、最後の力を振り絞って一生懸命歩き、余裕を持った時間に駅に到着しました!!万歳!!何とか無事にこの大縦走の山旅を終了することができました!!

満身創痍でしたが、皆既月食も重なり、思い出に残る山行となりました。

よく頑張りました!!

読図や装備の厳選は、これからも課題として引き続き勉強が続きますが、とりあえず、本当によくやった!と自分で自分を褒めてあげたいです(笑)

…でも、次はお気楽登山がいいかなぁ…(笑)







1日目 行動時間 7時間(標準タイム 6時間30分)                ■山行タイム 6時間30分 


8:15 福ちゃん荘

 9:14 雷岩 59(60) 

9:22 大菩薩嶺(2,056.9m) 8(10)

10:03 賽の河原 46(35)

10:17〜10:22 大菩薩峠 14(10)

10:56 石丸峠 34(30)

12:18〜12:40 小金沢山 1’22(1’20)

13:20 牛奥ノ雁ヶ腹摺山 40(40)

14:50 黒岳 1'30(1'10)

15:15 野営地 30


2日目 行動時間 8時間30分(標準タイム 6時間30分)

■山行タイム 7時間15分


5:40 野営地 

 6:15〜6:30 湯の沢峠 30

 7:08~7:15 大蔵高丸 38(40)

 7:40〜7:48 ハマイバ丸 25(30)

8:14 天下石 26(30)

8:34 米背負峠 20(15)

8:59 大谷ヶ丸 25(20)

10:14 分岐 1’15(50)

10:38〜11:00 滝子山 24(20)

11:13〜11:18 檜平 13(35)

12:40〜12:50 水場 1'22(50) 

13:26〜13:33 林道 36(30)

14:04 初狩駅 31(45)


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