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天狗岳〜敢えなく撤退〜



ラニーニャ現象のみならず、偏西風の蛇行による寒気の度重なる到来で、天候によっては死を招きかねない雪山登山はなかなか決行できず仕舞い。 しかし、ようやくそのチャンスがやってきました。 紆余曲折あって赤岳登山を回避し、挑戦することになったのは懐かしの 天狗岳。 初めての雪山登山と同じく、渋の湯から入り黒百合ヒュッテ泊で向かう予定でしたが、Nさんが「日帰りなら可能」と急遽参戦することになっ為、 最終的には西尾根を使って西天狗~東天狗、黒百合ヒュッテを経由して唐沢鉱泉というかなり強行軍な周遊コースに決定しました。 この西尾根。通る人もちらほらいるようですが、途中小屋もなく、王道ルートに比べると格段に通る人は少ないと推測され、ラッセルを強いられる可能性は否めない状況。 しかし、Kさんの「3人いれば日帰りラッセルも可能!?」との熱い言葉に ほだされたことや、岩場ありのこのルートは練習としても魅力的等、多少心配はありつつも楽しみな山行となりました。 この日Nさんは雪山登山をいよいよ本格的に開始するということで、新品の冬靴と12本爪アイゼンデビュー。実は私も毎度悩まされていた冬靴によるひどい靴擦れに辟易し、とうとう新しい冬靴とアイゼンを購入。 結局2人ともKさんとおそろいのアゾロの冬靴、モンベルのアイゼン、カジタックスを購入したことから、アゾロ&カジタックス隊で入山することになりました。 2時起き3時出発で途中Nさんと合流し、唐沢鉱泉まで向かいますが、高速を降りると、いきなりの完全雪道でかなりびびります。 早い時間に着いたと思っていましたが、いちいち準備に時間がかかってしまい、結局歩き始めたのは7時30分頃。 地図通り、いきなりの急斜面を登っていきますが、なかなかきつい。 アイゼンを着ける程ではない道ではありますが、やはりお二人のようにチェーンスパイク無しではかなり歩きにくい状態です。これは、次からチェーンスパイクも買うべきだなぁ等と思いながら、必死でKさんの後を追いますがなかなかそのスピードには付いていけません。 急登であっという間に暑くなり、ミドルレイヤーを脱ぎます。 きついながらも登っているうちに、イマイチだった天気も途中周囲の山々が見えてきたりして気分は上々。 ようやく分岐までやってきました。じきに稜線に出ることから、ここでいよいよアイゼンを着けることにします。 前日、久しぶりに装着するアイゼンやワカンの着け方を何度も何度も練習し、なんとか心得ていたはずでしたが、雪だらけの場所でゴワゴワのオーバーグローブ、しかも立ったままアイゼンを装着するなんて器用なこと、なかなかできたものではありません。辛うじてインナー手袋で立ったまま 装着しようとしますが、片足で靴の裏の雪を落とし、アイゼンを履くのに相当手こずりました。朽ちた倒木に腰掛けて先にアイゼンを着けたNさんが場所を譲ってくれ、再度チャレンジしますが、とにかく動作が緩慢になりなかなかうまくいきません。しかも、前日うまくはまったはずの前側のコバにどうしても金具がかからない…。悪戦苦闘していると、心優しいNさんが力を込めて金具を持ち上げてくれ、なんとか装着完了! そんなこんなで15分や20分はあっという間に過ぎていくという有様。 アイゼンを装着し、斜面の雪道をガシガシと登って行くことができるようにはなりつつも、たまにトレースを外して足が埋まる事を繰り返しながら高度を上げていきます。それと同時に気温はどんどん下がっていき、帽子もアウターもグローブも、全てがカチカチに凍り付いていていきます。 なかなか稜線には出られませんでしたが、何とかほぼ予定通りに第1展望台へ到着。しかし写真を撮ろうと思っても、グローブを外して…と言っている間に時間はどんどん押す一方。 やがてNさんが、指が相当ヤバイ。と言い始めました。グローブの素材が低温に対応しきれていなかったらしく、かなりしんどい様子。そこで、Kさんがラッセル用の長いグローブを差し出しますが、薄手のもので、暖かさはあまり期待できそうもありません。そこで、私の代えのグローブを使ってもらおうとザックから取り出しますがサイズが合わず断念。再び歩き始めますが、今度はKさんのアイゼンの調子が悪いようで、先頭をNさんに譲ります。先へ進む毎に雪の量は更に増えていき、プチラッセル状態に陥りました。行く手を大量の雪に阻まれ、ここで隊長Kさんが再び先頭交代となりました。 この辺で、Nさんの指は極限状態に陥ってしまいました。Nさんが再度「グローブを貸して下さい」とKさんに声かけ。相当我慢していた様子で、この寒さで凍傷にでもなったら大変!何故さっき気付かなかったのか、その時はめていた私のミトンなら少し大きさに余裕があるのでは??と急に思いつき、早速Nさんに試してもらいました。するとサイズがバッチリだったので、私は代えのグローブをはめ、Nさんの指は凍傷を免れようやくホカホカに。良かった良かった! 一方Kさんは、年齢詐称してるんじゃないかと思う程の漲る元気。突き抜けた身体能力に感服です。勢い良く前進してはいましたが、 大量の積雪で目印のリボンが埋まったりしているため登山道が正しいかどうかかなり怪しくなってきました。 天気もあまり良くなく、段々ガスが上がって微量の雪が降っています。 …しかも、Kさんは立ち枯れた木をストックで更に叩き割って木片を雪上に散らし、覆い被さる木々の葉を落としながら、そこここに目印を付けながら歩いています。 …ん??これ、どっかで見たような…。 そう。この天狗岳からほど近い蓼科山に以前登った時も、悪天に見舞われ ましたが、その時の風景にそっくり。つまり…目印に雪上を踏み抜いたり、馬の形の岩が見えたら…とか言うようなかなりヤバイ状態に一歩足を踏み入れてるということなのでした。 念のためGPSで確認してみると、西天狗岳手前の最後のピークに差しかかっていることがわかりました。このピークを越えれば、あと少しで山頂 です。しかし、この辺りでついにトレースが不明瞭になりました。ここ数日はそれほど多くの雪が降ったわけではないはずでしたが、もともとトレースの少ないマイナールートのせいで雪にに埋もれたか、若しくはあまりの雪の多さに多くの人がここで撤退したか。というところかもしれません。 時間を計算してみると、当初の予定からは相当遅れており、既に東天狗を通過していなければいけない時間をとっくに過ぎているのでした。これはマズイ。明らかに東天狗を回って周回するには時間がかかりすぎている し、西天狗岳でピストンするにしても、この先の雪の状況では更に時間が かかりそうです。既に時間も11時を過ぎていることから、ピストンすら危ういだろうと私は思いました。そうこうするうちに、後続のグループがやってきました。 この3人組の男性達はかなり熟練風で、この時間でも東天狗経由で周回するつもりでいるらしい。しかもトレースのない雪道を前に、ワカンを装着し始めました。Kさんもこの人達に触発され、かなりイケイケになってきており、怪しい雰囲気になってきました。当然、私は強力に前進を拒否。その拒絶っぷりを見て、後続グループのリーダー格らしきお兄さんに笑われる始末。しかし、Kさんのイケイケ度は更に強まり、ついにお兄さん達と一緒にワカンを着け始めました。 Nさんは、行っても帰ってもどちらでもいいとは言いながら、私のことを相当気遣って下さり、「やめましょう」と進言してくれました。しかしKさんは… 「わかったわかった!!やめるよ!!でもとりあえずコルまでは行ってみようぜ!!」と行く気満々です。フカフカの雪の中、ワカンを装着し、お兄さん3人に先行してもらいとりあえず先へ進むことになりました。 Kさんがお兄さん達に追随してものすごい雪の中を突き進んで行った後を 私も追いますが、ワカンを着けていない(着ける気力すらなかった)私は 全く前に進む事ができず、「無理ーーー!!」と叫びました。 後ろにいたNさんは、見るに見かねて 「それ以上登らなくていいですよ!Kさんに戻ろうって言ってきますね!」 とKさんを追いかけて登って行ってくれました。私も何とか数m登り稜線に出ましたが、さっきまで見えていた西天狗岳はすっかりガスの中に包まれており、風も相当強くなっていました。 さすがのKさんも、これはマズイと思ったらしく、目と鼻の先の第二展望台までで撤退しようと決意してくれました。 展望台にようやく到着して証拠写真を撮ろうとしますが、頬に突き刺すような強風、更に指が痛すぎて素手でシャッターを切る事すらできません。滞在時間数分で撤退です。展望台から先の道は完全にトレース無し。 「黒百合ヒュッテのビーフシチューが待ってますよ!」 と息巻いていたお兄さん達も、夏道以外の巻き道がない事を確認し、同じく撤退を決めた様子でした。 あと僅かで山頂ではありましたが、今回は山頂目前で西天狗岳に別れを告げます。 「これは正しい判断だった」とNさんは言って下さり、Kさんも急な天候悪化であの武尊山の悪夢を思い出し、行く気が失せたようです。 結局途中ご飯を食べるような場所もなかった為、軽い休憩を挟みながら一気に下山となりました。 今回は、Nさんが私を気遣って下さり、更にKさんのイケイケモードを冷静になだめてくださったおかげで本当に心強かったです…(笑)!! KさんとNさんだけなら楽勝で行って帰って来られたとは思いますが、私は やっぱりへなちょこハイカー…。どうか許してくださいませ。 でも、これに懲りずこれからもどうかよろしくお願い致します!! 【今回の西天狗岳登山記録】   行動時間 5時間42分(標準タイム およそ3時間45分)  7:20 唐沢鉱泉 8:20 分岐 1’00(50) 9:46 第一展望台 1’26(45) 11:26 第二展望台 1’40(およそ30) 12:29  分岐 1’03(およそ1’00) 13:02 唐沢鉱泉 33(40)


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