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  • 執筆者の写真junpei

二子棚田



鴨川には、大昔父が購入したままほったらかしの土地がありました。 夢見る夢男で変人だった父の考える事は、どうも浮世離れしていて、何故 縁もゆかりもないそんな辺鄙な土地、しかも山林を購入したのか、既に父 が他界した今では本人に聞くことも出来ません。 父が亡くなり、わずかな財産を分けるという話になった時、私は弟に全て 相続してもらうつもりでした。しかし、何かひとつでももらってくれと言 ってくれた弟の意思を尊重し、どうにもならないその鴨川の土地をもらう 事にしました。 活用しようにも、まずは造成にいくらかかるか分からないような山林で、 ライフラインが引けるかどうかもわからないような土地に、いかほどの価 値があろうかと、その後殆ど私の意識の中に浮上してくることはありませ んでしたが、あるとき、いつものように遊びに行った友人E家でその土地 の話になったところ、思いもよらない盛り上がりをみせたのです。 彼らが毎年鴨川に遊びに行っていることは重々承知していたものの、そん な土地があったところで何の足しにもならないと思っていたからこそ、一 言もそんな話はしなかったのですが、「鴨川はいいところだからもっと ちゃんと調べろ」と言われ、それから真剣にそこがどんなところなのか調 べ始めました。 小学生にもならない頃、家族で一度だけその土地を見に行った事があった という朧げな記憶しかない為、まずは登記簿の住所からその場所を特定す るのが大変でした。しかし、調べて行く過程でその土地の地区に、海が見 える棚田があることを発見。HPを見ると、とても素敵なところ!! http://futagotanada.wixsite.com/futagotanada しかも、棚田を保存するべくオーナー制度があるらしい。 まずはちまちま考えるより、とにかく行動あるのみ、飛び込んでみよう! と私も応募してみたところ、晴れてオーナーになれたというわけです。 保存会から知らせがあった田植え当日は仕事の為、参加できないものの、 翌日は祝日ということもあり、E家の都合を聞いてみると「行ける!」と のこと。 早速事務局に連絡して、田植えも出来ることになった為、前泊して家族と 共に鴨川へ出かける事になりました。夜、みんなで飲みながら語り合って いたところ、なんと知人からとんでもないLINEが入りました。その日の 朝日新聞の一面に、鴨川の棚田の記事が載っているとのこと!写真を送っ てもらうと、どうやらもう一つの棚田、大山千枚田の写真でした。しか し、同じ保存会の棚田には違いなく、何だかこうしてトントン拍子に話が 進み、しかも新聞記事にまで取り上げられるとは何か見えざる手に導かれ ているとしか思えませんでした。 当日、渋滞をなんとかかわしつつ、無事鴨川には到着しましたが、棚田ま での道がよくわからない。あり得ない程狭い農道に入り込み、これ以上進 むのは危険だと来た道を戻っているところに、丁度保存会代表のMさんか ら電話がかかってきました。わざわざ途中まで迎えに来てくれるとのこ と。 なんとご親切な!! 途中で落ち合うと、かなりイケイケなスピードでやはりかなりの狭い農道 をぐいぐい登って行きます。ついに、二子棚田へ到着です。 代表のMさん、そしてMさんの助手らしきSさんが、快く我々5人を迎えて くださいました。お二人とも何とも言えぬ優しい雰囲気をお持ちの素敵な 方々です。 辺りを見回すと、写真で見た通り、素晴らしい景色が広がっています。 棚田から見える海がとても美しく、この景観はやはり残すべきものだな。と しみじみ見つめました。 早速地下足袋に履き替えて、いよいよ田植えとなりました。 泥に足を突っ込み、今にもステーン!!とすっ転びそうになるような、おぼ つかない足取りで、Mさんに教えを請いながら3,4本の苗を苗の塊からむし り取りつつ、植えていきます。 ガイドとなる紐を目安にまっすぐ植えているつもりですが、間隔が開きすぎ たり曲がったりで、なかなか上手く植えられず振り返ってみれば、なんだか ぐちゃぐちゃの田んぼになってしまいました。そして、途中作業に飽き、カ エル取りに夢中になってしまったSを除いた4人は黙々と苗を植え続け、つ いに無事田植えが終了! その後SさんMさんと色々お話をしながら暫し棚田でくつろぎます。 Sさんのお話だと、どうやら私は相当偏屈な人間だと誤解されていた様子 で、SさんMさんお二人には大分お気を煩わせてしまったみたい。 本当に申し訳ございませんでした!! この、SさんとMさんのご関係もなかなか興味深いところですが、今回は そこまでお話を聞くことはできませんでした。 その後Mさんが土地の場所を特定すべく、おそらくここではないかと当た りをつけ連れて行ってくださることになり、お言葉に甘えて後に続きま す。やはりこっちも相当狭い道。すると、車がジャングルみたいな山の中 で止まりました。えええーーー!!ここか!!??車から下り、地図と照 らし合わせて大体ここではないか?と、特定はできたものの、この鬱蒼と した木やこの傾斜では、造成するのに一体いくらかかるかわかりません。 これは、やっぱり夢物語のままで終わるだろうと確信しました。しかし、 木々の間から僅かに海が見えており、40年程前の当時はきっと海が見渡 せるような土地だったに違いありません。しかも、今は荒れ地になってい る近所の段々の土地はおそらく当時棚田だったと思われ、父もこの景観が気 に入ってこの場所を購入したのだろうと推測できました。 変人の血を受け継ぐ娘のこの行動力に、父親も草葉の陰で喜んでいること だろうと、なんだか嬉しくなりました。 それもこれも、Mさんが連れて来て下さった御陰!!我々だけでは、こん なに簡単に場所を特定することは出来なかったでしょう。本当にご親切痛 み入ります…!! その後も、磯遊びが出来そうな場所まで案内して頂く等本当にお世話にな りました。SさんMさん共、お人柄がにじみ出るとっても素敵で魅力的な 方々でした。 これから、私と私の友人E家と、この鴨川がどんな関係性を帯びていくの か、本当に楽しみです。 そして、私をわざわざ鴨川まで連れて行ってくれたE家の皆様、本当に感 謝してます!! これからもよろしくね♪


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