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  • 執筆者の写真junpei

愛すべき存在

長かった入院生活、療養生活を終え、今日が社会復帰初日。

中町通を敷地沿いに右に折れると、懐かしい匂いが漂ってきた。 馬の匂いだ。 ボロの匂いや馬の独特の匂い、寝わらの匂い…。 人はこの匂いを嫌うかもしれない。 でも、私にとっては何とも言えない優しい匂い。 思わず顔がほころびる。

「あ〜!!帰って来たんだ」

そう思ったら、早くあのこたちに会いたくて会いたくて、 ついつい歩幅が広くなる。 懐かしの門をくぐり、警備の方と久々のご挨拶をする間も惜しみ、 はやる気持ちを抑えて、厩舎地区へ。

一番手前の馬房は、何度となく乗っている天蓬。 耐えきれず、遠くから名前を呼ぶ。 近寄って、名前を呼びながら首に抱きついた。 彼も思い出したように思い切りじゃれてきた。 嬉しくて、嬉しくて、彼の顔を両腕で抱え込んで挟み、 顔をこれでもかというくらい擦り付ける。 おでことおでこをくっつけて、 「久しぶりだね!!元気だった!?」って話していたら、 涙が出た。

馬のいい匂い!! あったかい!! おっきい!! そして…優しい…。

ああ。こんなにこの子たちは、優しかったんだ。 私にとって、この子たちの存在はこんなに大きかったんだ。 そう思ったら、息が苦しくなる程、心が震えた。

みんな、優しく私を迎えてくれた。 始業時間1時間前に着いたのに、 ひとりひとり挨拶しながら厩舎をまわっていたら、 あっという間に1時間過ぎてしまった。

すっかり化粧もはげ落ち、馬の匂いが体中から漂っている。 でも、いいにおい。

私の心をいつも支えてくれていたのは、 間違いなく、この子たちだった。 3ヶ月も会えなくて、忘れられていると思っていたけど、 彼らは裏切らなかった。

ありがとう。みんな。

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