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  • 執筆者の写真junpei

笹尾根縦走リベンジ~とんでもないバリエーション~

更新日:2021年1月20日



#笹尾根#登山#三頭山#日原峠#水場

このところ、きちんとした登山をやっていないなぁと思っていました。

そこで、今回選んだのは去年Nちゃんと初のテント泊で歩いた笹尾根です。

まだ詳しい地図がない時代に、田部重治、小暮理太郎が山に泊まりながら歩いた笹尾根。

そしてその長い尾根が三頭山へと連なっていることを、歩きながら確信するという男前な冒険登山。縦走登山のさきがけだったに違いない「笹尾根」を、私も二人の足跡を辿ってみたいと思ったことが、去年のテント泊を決意したきっかけでした。

しかし、テント装備は相当の重さで、食料等を含めると軽く20キロ越えでした。なんとか宿泊予定地だった丸山まで辿りついたものの、その後の三頭山までの行程を考えれば相当無理があると判断し、翌日はすぐに下山した為、その先は積み残しという形で終わっていました。

今回は、ソロ。そしてツェルト泊で挑戦です。

前回の課題だった荷物は、極力軽量化に努めました。水は途中の日原峠の水場で補給。食料はすべてフリーズドライ。携行品も必要最低限に。その結果かなり荷物は軽くなり、通常登山よりちょっと重いと感じる程度になんとか収まりました。


当日朝、藤野駅からバスに乗り、鎌沢入口へ。すると、登山口へと続く道の入口に、工事のバリケードが…。工事のおじさんが、工事中で登山口へは行けないと教えてくれました。この先の和田からも行けるようでしたが、どうやら道標もないらしく、非常に不親切。道標なし、道も遠回りということで、急遽タクシーを呼ぶことにしました。こんなことなら、初めからタクシーに乗ったほうが良かったとは思いつつも、数分後来てくれたタクシーに乗り、生藤山最短コースの入口である軍刀利神社まで行って頂けたので、これはこれで有難い事。

女性の運転手さんから、「気を付けてね」との優しいお守りの言葉も頂きました。

神社までの階段を登り、今回の登山の安全を祈願します。そこから暫く行くと、大きな楓のご神木。ここでもお参りをしました。しかし、あわや大惨事!?というような事故がこのあと起きることになるとは、もちろんこの時には思いもしませんでした。


薄暗い樹林帯の急登をゆっくりと確実に登っていきます。つづら折りの道を越え、三国山への道標が見えたところで、水を飲もうとザックを下ろしました。その時です!

置いた場所が悪かったのか、ザックは傾き、ごろんごろんと坂を勢いよく転がっていきます。すぐに止まるだろうと思いましたが、願いもむなしくあっという間に崖下へと転落。眼前から完全に消えました。

そこそこの重量があった為なのか、かなり勢いよく転がって行ってしまったザック。坂を下り、崖のような急斜面を上から覗き込みますが、全くその姿はありません。よく見ると、数メートル下に、水筒が見えました。しかし、この斜面は、完全にバリエーション。当然のことながら、誰も踏んだ形跡はないようです。とりあえず水筒がある場所まで慎重に下りてみると、ガーーーン。水筒の中身は全て土の中に。転げ落ちた拍子に口が開いたようです。そして、更に先に、ザックに外付けしたソフトシェル、更に先にはタイベックスシート、アストロフォイル、ツェルトが点々と散らばって落ちていました。斜面は相当斜度があり、一歩間違えれば自分が転がり落ちそうな急傾斜です。しかし、とにかく慎重に、一歩一歩足場を確かめ、ひとつひとつ拾い上げていきます。その残骸のように散らばった落下物を見ながら、滑落するとこうなるのか…と、恐怖を覚えながら下っていきます。上を見上げると、かなり下に降りてきてしまったことがわかりました。散らばった物を一旦斜面に置き、そこからザックが見えないか見回しますが、一向に見えません。もしかして、取れないような場所まで落ちてしまったのかも。…仕方ない。これは荷物を諦め、撤退するしかないかもしれない。と思いました。しかし、山と道で購入したお気に入りのザック。しかも、大事な物が沢山詰まっています。暫し思案し、あと少しだけ、行けるところまで降りてみることにしました。荷物をそこに置いたまま、更に降りてみると、ありました!!何とか降りて行けそうなところに留まってくれていました。慎重に更に坂を降りていきます。ようやくザック奪還です!!ホッとしたのも束の間。降りてきた部分を見上げ、思わず溜息が出ました。軽く100m位はありそうな(おそらくそんなにはない)標高差でした…。うへーーーー。大丈夫だろうか…??!!

とにかく、慎重に、頑張るしかありません。とんでもないバリエーションを歩く羽目になってしまいました。

幸い、斜面はふかふかの土で、蹴りこめば足場が作れたこと、また、自分の蹴りこんだ足場を頼りに登って行くことが出来た為、ルートも見失わずにすみました。ところどころ両手も使いながら、必死によじ登って行きます。途中に置いた荷物を全てザックの中にしまい込み、更に上へ。

「ふーーーーーー!!!」ようやく、登山道へと復帰しました!!

ひぇーー!!危なかった…!!!

自らが招いたうっかりミス。そして、ちょっと間違えば滑落…。今まで登山をしてきた中でも、2番目位にヤバヤバな状況でした。二度と、ザックを置く場所をおろそかにすまい!!と強く心に誓う瞬間でした。とりあえずザックを取り戻すことはできました。しかし、あまりにもテンパっていたせいで、そこでどれ程の時間を費やしたのかメモを取ることすら忘れていました。しかし、その後のタイムを見ると、それ程の時間ではなかったのかもしれません。しかし、私にとってはとてつもなく長い時間に思えました。安全な場所に、しっかりとザックを置き、改めて水を飲もうとしますが、水筒の水は全部無くなり、泥だらけになってしまったので、プラティパスから直接水を飲みました。残りの水は約1ℓ。とりあえず水場まで持てば大丈夫なので、水の心配はしなくて良さそうです。あまりの出来事に、動揺は隠せませんが、無くした物も無さそうなので、このまま予定通り歩くことに決めました。

これだけで済んだのは、神様のお陰かもしれません。改めて、不幸中の幸いに感謝し、心新たに歩き始めます。

やがて、前回鎌沢の方から歩いてきた時の道と合流。暫く行くと三国山に到着。ここから生藤山はすぐそこです。ベンチにザックをデポして、生藤山(990.8m)山頂を踏んできました。天気も良く、富士山が木々の隙間から見えました。いよいよ、ここからが本番です。デポしたザックを背負い、笹尾根を歩き始めます。冬枯れた木々の隙間からは、大月の山々が見えていました。尾根からすぐ下にある上野原カントリーのすぐ隣は、先日Rさんと山ごはんをした能岳、八重山です。別の場所から登ったことのある場所を見るのは、やはり楽しいものです。

暫く行くと、軍刀利神社元社です。ここでもきちんとお参り。ありがとうございます!と、感謝の意を込めて。そして、最後まで見守ってくださいと改めてお祈りしました。

神社付近の平坦地を過ぎると、地味にアップダウンを繰り返しながら、一つ目のピーク、熊倉山(966m)へやってきました。一人も出会わないだろうと思っていた笹尾根ですが、このピークで2人のおじさまが休憩中でした。大荷物を指摘されるのも嫌なので、挨拶だけを交わし、さっと素通りします。すると、向こう側からまた一人、おじさまがやってきました。しかし、これを最後に思った通り誰にも会わない静かな山歩きとなりました。

順調に栗坂峠(879m)を通り越し、ピークを北側に巻くと浅間峠です。ここでお昼を食べ、田部重治、小暮理太郎も眺めたであろう立派な杉にタッチ。パワーをもらって、再び歩き始めます。ここからは基本登り調子になりつつ、小さいアップダウンを繰り返します。

途中、12時の鐘が里から聞こえてきました。小菅村で聞いた「野中のバラ」でした。どうやらこの大月界隈のお昼の鐘は、この曲で統一されているようです。この鐘、何度聞いても心が温まります。

やがて赤い前掛けをしたお地蔵様の姿が見えました。日原峠です。ここで、貴重な水を補給します。サブザックにプラティパスと水筒を入れ、ザックは峠にデポして水場へと向かいました。前回来たときは、5分という案内が信じられないくらい遠くに感じた水場でしたが、今回は2回目ということもあり、近くに感じました。期待通り水はこんこんと湧き出ていました。プラティパスに目いっぱい水を詰め込み、水筒も満タン。お水に向かって、「ありがとうございます!!」と手を合わせます。この水が無ければ、笹尾根縦走は間違いなく無理でしょう。有難いお水です。これでおそらく5キロはあるでしょう。ザックに水を詰めて背負ってみると、ずっしりと肩に食い込む重さです。これほど背負う必要はないのかもしれませんが、今回のザック転落事故を思えば、有事の際の事も考え、余裕を持っておきたいところ。まるで歩荷訓練のようですが、頑張って背負います。重量が増えたことで俄然スピードは落ち、次々やってくるアップダウンに疲労を隠せなくなってきました。土俵岳(1005.2m)、小棡峠と通り過ぎ、前回宿泊地である丸山(1098.3m)までやってきました。去年、ここまでよく頑張って歩いたものだと我ながら感心します。

さて、そろそろ宿泊地を決める時間ですが、今回は荷物の重量が軽い分、まだ余力がありました。翌日三頭山まで歩かなければならないことを考えれば、初日に行けるところまで行って泊まりたいところ。ということで、展望があると書かれている数馬峠まで行くことにしました。アップダウンを繰り返す中、立ち止まって息を入れながら歩いて行くと、目の前が開けました。数馬峠です。地図の説明通り、南側が開けていて、富士山もばっちり見えています。時間も15時と、既に夕暮れの雰囲気。よし!ここを野営地とする!

しかし、あまり平らな部分がありません。この時間では、もう誰も来やしないだろうが、さすがに登山道の上にツェルトを張るわけにもいかず、結局太い杉の木を利用して登山道の横に設営です。なんとかツェルトも無事に張ることが出来、荷物整理等しているうちに日が暮れてきました。お湯を沸かし、アルファ米とフリーズドライのカレーで晩御飯です。凍らせてきたビールは未だ凍ったままだったので、湯煎しながら飲みました。その後ちまちまお湯を沸かしつつ、ウイスキーのお湯割りで2次会。寝るまでの間、アマゾンプライムでダウンロードしてきた動画を楽しみ、20時頃就寝となりました。

今回、寒さ対策として新たに購入した#5のブランケットをシュラフ、シュラフカバーに追加して使用。服もありったけのものを着込んで寝たので、十分な暖かさがありました。しかし、眠りは浅く、鹿の鳴き声でしばしば目を覚ましました。暫くすると、今度はガサガサという物音で目が覚めます。これもおそらく鹿だろうと、じっとしていると、やがて音は去り、静けさが戻ってきました。次に目が覚めたのは真夜中。ふと天井を見ると、ツェルトに光が当たっています。月明りでした。

初めてテント泊をした時も、満月に近い月夜がテントに葉の影を作り、不思議と安心しましたが、今回も期せずしてほぼ満月の夜。怖さはなく、落ち着いた気持ちで眠ることが出来ました。

朝4時。自然と目が覚めたので、行動開始です。まずはお湯を沸かし、雑炊と味噌汁で朝食。そこからは月明りの中、ヘッドランプで撤収作業。いよいよ数馬峠ともさよならです。未だ外は月明りのみ。暗いので、足を取られないよう慎重にゆっくりと進みます。

予定より早い段階で槙寄山(1188.2m)へ到着。まだ辺りは薄暗いですが、展望はバッチリで、富士山も綺麗に見えていました。まだまだ先があるので、休むことなく歩いて行きます。槙寄山を過ぎると、段々登りがきつくなってきました。やがて陽が上り、背後から赤い光が道を照らすと、霜がキラキラと光って見えました。暫く行くと、北東方向に派生する尾根が見えてきたので、大沢山が近づいてきたことがわかりました。道は段々ゴツゴツした岩場が増えていきます。大沢ノ頭を過ぎると、一旦道は下り、避難小屋が見えてきました。目の前に見える急坂を登れば、ついに三頭山です。整備された階段を登り、まずは三頭山東峰(1527.6m)へと向かいます。とうとう笹尾根をつないでここまでやってきました!!感慨もひとしおです。

頑張って歩いたからか、ここで猛烈におなかが空いたので、カップラーメンを食べました。よく晴れていて、富士山、奥多摩の山々が良く見えています。荷物を片付け、続いて西峰へ。以前来た時にはなかった、立派な標識が立っている他は、以前のままの山頂です。鷹ノ巣山から雲取山まで、よく見えています。暫く山頂の景色を独り占めし、景色を堪能してから下山することにしました。ムシカリ峠まで戻り、比較的簡単だと言われている都民の森へ降りるコースです。しかし、手が入っているとは言え、三頭ノ大滝までは普通に登山道でした。坂を下りつつ、尾根上に建っている避難小屋を振り返って見ようとしたときに、反対側の急斜面に動くものを発見しました。2頭のメス鹿です。おしりの真っ白い毛が逆立っていることから、私を警戒しているようでした。2頭とも、私をじーっと見ています。暫く2頭の様子を見ていましたが、ゆっくりと急斜面を登って行ってしまいました。昨日鳴いていたのはまた別の鹿なのでしょうか。沢山の個体数があるのかもしれません。

滝の手前で、この日初めての女性ハイカーとすれ違いました。早い時間に私が下りてきたので、驚いた様子。昨日山に泊まったことを話すと、更に驚いていました。その後滝まで来ると、ふつうに散策している風の方が何人かいました。やはり、ここは普段から人が多いのかもしれません。冬季期間は都民の森にはバスが来ないので、仕方なく数馬バス停まで続く廃道っぽい道を辿り、歩きます。途中危うい橋や渡渉を繰り返すと、ようやくバス停へと到着しました。しかし、バスは1時間来ない。ということで、温泉センターまで更に歩き、お風呂に入ることにしました。

2日間にわたる、長い長い笹尾根縦走の山旅はこれにて終了となりました。

ハプニング続きで、一時はどうなることかと思いましたが、何とか無事に下山することができました。念願の笹尾根縦走も成功し、久しぶりにハードな山行を達成出来て本当に嬉しいです。

山の神様、ありがとうございました!

今年も残り少なくなってきましたが、あと何回行けるかな…。


【今回の笹尾根登山記録】   


1日目 行動時間 6時間35分(標準タイム約6時間)                ■山行タイム 5時間15分 


8:20 軍刀利神社

 8:35〜8:40 奥の院 15 

9:20 軍刀利神社分岐 35【45】(50)【途中ザック奪還に20分程かかる】

9:51 三国山 31

9:55 生藤山 4【35】(30)

10:00~10:05 三国山 5(10)

10:35 熊倉山 30(25)

11:23〜11:40 浅間峠 48(40)

12:23〜12:50 日原峠(水場往復含む) 43(60)

13:05 土俵岳 15

13:37 小棡峠 32【47】(30)

14:00~14:10 丸山 23(15)

14:55  数馬峠 45(40)

2日目 行動時間 5時間15分(標準タイムおよそ5時間10分)

■山行タイム 4'15


5:20 数馬峠 

 6:10 槙寄山 50(1'10)

 7:00~7:20 ハチザス沢ノ頭 50(1'45)

 7:32 大沢ノ頭 12

7:43 ムシカリ峠 11【23】(30)

8:00~8:25 三頭山東峰 17(25)

 8:27~8:35 三頭山西峰

 8:43 ムシカリ峠 8(10)

10:35 数馬バス停 




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