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命の危機〜裏銀座で北アルプスへ〜

  • 執筆者の写真: junpei
    junpei
  • 7月27日
  • 読了時間: 13分

更新日:8月5日



いよいよ今年も夏山登山の季節がやって来ました。


今年は憧れの水晶岳に登るべく、Nちゃんと計画を立てました。

考えた結果、日本三大急登ブナ立尾根から裏銀座で水晶岳へ向かうことに決定。

小屋予約の争奪戦を無事勝ち抜き、行けることが確定したのは良いものの、年々体力不足も否めなくなってきていて、果たしてちゃんと歩けるのか本当に不安でした。


ギリギリにトレーニング登山に向かおうと思ったものの、梅雨明けと同時に酷暑がやって来た為、これで怪我したり体調を崩しては元も子もないと不安ではありましたがぶっつけ本番で臨むことにしました。

さて当日の朝。Nちゃんは新宿から、私は八王子からあずさに乗り、信濃大町までまずは3時間弱の電車の旅です。ところが、Nちゃんから急遽連絡が。

「乗り換え大失敗で、あずさに間に合いません」とのこと。

ありゃーー。やっちまったなー。長野まで新幹線で出て別ルートで大町を目指すとのこと。

不安に苛まれるこの心理状態を、Nちゃんとの会話で和らげたかったのですが残念ながら一人で向かうことになりました。

Nちゃんが座るはずの席には一人の女性が。茅野駅を前に準備をし始めた彼女の荷物にストックがあった為、「どちらに登られるんですか?」と聞いてみると、千丈小屋で1ヶ月働くのだそう。養護教員で、8月1ヶ月間は完全にお休みで収入が断たれる為、最近興味のある山で仕事をしようと思い立ったとのこと。短い時間でしたが、楽しいおしゃべりで少し心も落ち着きました。


そうこうするうちに信濃大町へ先着。暫くするとNちゃんもバスで無事到着です。

スタートから色々ありましたが、なんとか無事に七倉山荘へと到着しました。

この七倉山荘ですが、七倉ダム付近にある温泉施設。山荘と名はついているものの、普通の旅館と変わらない素晴らしいお宿で、従業員の方もメチャクチャ親切。

また泊まりに来たいと思う素晴らしいところでした。

さて、ゆっくり温泉を堪能した後は、バーベキューの夕食です。同じテーブルになったご夫婦と山の話で盛り上がりました。なんとこのお二人、双六から槍に抜けるとのことで、すごいなぁ…と感心しきり。双六までは同じ行程を進むことになるので、よろしくお願いしますとお話しました。


おそらく、この日ここに泊まっている方の殆どが同じ道筋を辿るんだなぁと思いました。

山小屋争奪戦を勝ち抜いた勝者たちです(笑)

翌日もメチャクチャ美味しい朝食を頂き、乗合タクシーで高瀬ダムへ移動。

お宿の方が見送ってくださり、心癒されます。

やがて第1陣の我々のタクシーがダムに到着したのを皮切りに、続々とタクシーがやってきました。いよいよ出発です。

吊り橋を渡り、暫くすると登山口。いきなり急登が始まります。



雨は降っていませんでしたが、なんだか蒸し暑い。そして、なんだか調子が悪い。

頭がクラクラします。倒れるんじゃないかと思うほど。頭が痛くなりそうな雰囲気があった為、ロキソニンを飲んだら、頭は大分すっきりしてきました。

ところが、今度は胃が痛い。そして突如としてやってきてしまいました。

そう、急なお腹の差し込みです…。予期せぬ時に、いきなりやってくるこの惨事。

「ダメだ!!」と叫び、またも崖から転落しそうな狭い場所で事を致す羽目になりました。

まだマシだったのは、樹林帯だったこと。

今回も、Nちゃんが見張っていてくれたお陰で、なんとか危機を脱し、人間の尊厳を守ることができました…やれやれ(笑)


とりあえず危機はやりすごしたものの、体調は絶不調。

今度は吐き気に苛まれます。一体どうしちゃったんでしょう。

気持ち悪さと戦いながら、なんとか一歩一歩登っていきます。

それにしても、さすがの日本三大急登です。とにかく、キツイ!!

前日のご夫婦やテン泊のお兄さんと途中休憩する度に色々お話しながら登るのは、心強くもあり、楽しい時間でした。ようやく4番標識を過ぎたという時でした。道端で少し休憩していると、何やらホワッとしたものが木々の間から見えました。

あれっ!?と思うと、こちらを覗き込むように姿を現しました。

オコジョです!

最初ねずみっぽく見えたので、ヤマネかなと思ったのですが、これは間違いなくオコジョでした。つぶらな瞳がカワイイ!!初めて実物を見ることができ、本当に嬉しい出来事でした。




そして、ついに烏帽子小屋へ到着。

なんと数年前に100周年を迎えたとかで、オンボロのほったて小屋のような建物でしたが、よく持ち堪えているなぁと感心しきりです。

暫く休憩した後、最小限の荷物を持って烏帽子岳山頂へと向かいます。

ところが、途中で雨が降って来ました。仕方なくレインウエアを着込み、進みます。

そして、小屋から1時間程の距離ですが、なかなか着かない(笑)しかも最後は鎖場を4箇所程超える急な岩場。ふうふう言いながらなんとか山頂へ到着しましたが、ガスガスで全く何も見えずすぐに引き返します。途中道を間違えたりしながらも、無事に小屋へ戻って来ました。




同じ寝床には、ソロの女性が二人いらっしゃり、お二人ともとても健脚で、そして素敵な雰囲気なのでした。お一人は、北海道から来たそうで、定年を前に山の為に仕事を辞めたとおっしゃっており、話す内容はメチャクチャパワフルで、世の中には本当にすごい人がいるもんだなぁと心から尊敬するばかりでした。

気になる翌日の天気はやはり雨予報。なるべく雨に降られないようにする為に、予定を前倒しして4時過ぎに出発することにしました。


朝早い時間は、風は強いもののまだ天気も良く、美しい雲海と日の出を見ることも出来ました。この頃は表銀座も綺麗に見えていましたが、三ツ岳を過ぎ、野口五郎小屋が近付く頃にはかなり曇って来て、ガスも出てきていました。

おおよそ標準タイムで野口五郎小屋へ到着。風がかなり強かった為、200円を支払って小屋の中で休憩しました。1時間程ここでゆっくりした後、レインウエアを着込みいざ出発です。

小屋を出て野口五郎岳に着く頃には完全にガスに包まれ、段々天候は悪化していきました。

そして、ついに雨が…。



かなり降りも強かったので、少しでも風の弱そうなハイマツ帯に道を外れ、レインパンツを履くことにしました。この時点で風はどんどん強くなり、雨も叩きつけるように降っていました。

まだここから水晶小屋までは3時間の道のりです。途中大きな岩がゴロゴロしている箇所や、狭い岩場も多々あり、気が抜けません。そして、とにかく風が半端じゃない。

何度も風に煽られよろけながら、一歩を踏み出すのもままならない位の暴風雨となっていきました。当然二人とも無言。そして、口には出さないものの、相当危険な状態に陥っていると悟っていました。

この日歩いている道は、森林限界を越えた稜線。つまり、一番風も強い場所。雨で身体が濡れ、暴風に晒されれば低体温症になりかねない状況です。既にずぶ濡れ状態で、ここで立ち止まったら確実に「死ぬ」と思いました。途中キツイ箇所も多々ありましたが、とにかく歩き続けるしかありません。

ゆっくりゆっくり、暴風雨と戦いながら進みます。途中突風でよろけ、転倒もしましたが、なんとか先へ進みます。

真砂岳を巻き、東沢乗越辺りまで来た時、今度は雷が鳴り始めました。さすがに「怖い!!」と声が出ました。稜線での逃げ場は全くない為、雷が落ちないよう祈るしかありません。

稲光と雷鳴の中、最後の急登が近づいてきました。

途中両側が切れ落ちた狭い痩せ尾根を通る時は、ここで風に煽られたら終わりだ。と思いながらも、意を決して渡りました。その後急登の登山道を左に折れると、行手に小屋がうっすら見えました。

ようやく到着です!!


小屋の扉を開けてみると、なんと宿泊者と、それ以外の停滞組で小屋内はごった返していました。なかなか中に入れない状態でしたが、なんとか中に入り受付です。すると、テン泊のお兄さんが休憩していました。

なんと3時間も出るに出られずここで停滞していたとのこと。行き先を聞いてみると、三俣山荘で宿泊予定ということで、まだここから3時間程かかるので、いつ出ようか躊躇しているらしい。

この状態では、山頂になど行けるはずもなく、とにかく身支度を整えようと部屋に入って着替え、ようやく人心地つきました。

昼ごはんのおにぎりと、水晶小屋名物の力汁を食べ、かなり気持ちも落ち着いてきました。

それにしても、本当に危険な風雨でした。一歩間違えたら死んでいてもおかしくない状況。よく無事に到着できたものです。


下山後にわかったことですが、この日北アルプスの各所で遭難が相次ぎ、亡くなった方が3人もいて、そのうちの1人は野口五郎岳付近で亡くなったらしい。もしかすると私たちと同じ行程だった方かもしれません。小屋で会う方みんな口を揃えて言っていたのが「命の危機」でした。しかし驚いたことは、この日水晶小屋をキャンセルした人は一人もおらず、全員無事に小屋に到着できていたということ。こういう場所に来ている人は殆どが猛者で、こんなへなちょこな私がそんな方々の中に入って歩いていること自体、かなりの冒険という気がしてきました。

というか、本当は分不相応なのかもしれません。

今後はますます体力も落ちるし、こういう場所に来るからにはもっと鍛えないとダメだな。と身に染みて感じるほかありませんでした。


さて、同じお部屋に後から到着した3人のお姉さんたちは、なんと宇都宮の方々で、ジム仲間とのこと。聞けば、栃木百名山は既に踏破し、百名山もほぼ登っているとのことで、体力気力あふれるパワフルお姉さんなのでした。3人ともとても素敵な方々で、楽しい時間を過ごすことが出来、ありがたい限り。

ずぶ濡れになった衣類やザック、靴などは乾燥室に置いていましたが、所狭しとぎゅうぎゅうに干されているのと、皆がジェットヒーターの前に置いて早く乾かそうとする為、すぐに自分の衣類が行方不明になったり、下に落ちてドロドロになったりで相当カオスな状態でした。

夕食は、本場でインド料理を修行してお店を開いた夫婦(元三俣山荘スタッフ同士が結婚)の監修で作られたスパイスカレー。とっても美味しいカレーでした。


夕飯を食べた後は、翌日のルートや行程をNちゃんと話し合いました。

3時過ぎに起床、まずは朝ごはんのお弁当を食べる。その後外の様子を見ながら水晶岳に登るかどうか最終的に6時に決定。天候が悪い場合は、鷲羽岳も回避し黒部川源流ルートで三俣山荘へ。そこでまだ天気が悪ければ、山荘の人に相談し、三俣蓮華も登らずに巻道で双六小屋へ移動。

というのが話し合った結果です。

翌朝起きてみると、天候は相変わらずで、かなりの風雨でした。

これは無理だ…。水晶岳は目と鼻の先。でも、この風では山頂付近の岩場を通るのはかなり危険です。小屋の人も止めた方がいいと言っていました。3人組のお姉さんたちも登頂を断念。小屋の人は鷲羽も危ないから源流ルートを通った方がいいと言っていたそうですが、お姉さんたちは登るとおっしゃり、あのご夫婦も登るとのこと。北海道から来たお姉さんも、鷲羽には登るとおっしゃっていました。

一部赤牛方面に抜ける人たちはそのまま水晶方面に向かい、我々は鷲羽には登らず、源流ルートを抜けることに決定。

鷲羽と道を分けるワリモ北分岐で、お姉さん3人とお別れしました。




暫くお互い手を振りながら、それぞれの道へ。

分岐から下っていくと、風は大分マシになり、雨も途中で止みました。

懸念された増水もさほどではなく、渡渉も難なく出来、無事に三俣山荘へ到着。

この頃にはすっかり天気も好転し、槍ヶ岳も見えていました。

小屋で休憩しようとしていると、なんとあの3人組のお姉さんたちが到着していました!!

速っ!!私たちがゆるゆる源流ルートを歩いている間に鷲羽を登って降りて来たようです。

すごい健脚です…。


食堂に上がり、朝ごはんの残りと薬膳スープで昼食です。

なんと、あのご夫婦もいらっしゃり、本当に皆さんの体力に驚くばかりでした。

ご夫婦と同じテーブルでご飯を頂き、3人のお姉さんたちは一足先に小屋を後にしました。その時も、手を振ってお別れしました。

ゆっくり休憩した後は、三俣蓮華岳へ。初日にやらかしてしまった靴擦れの状態が悪く、痛みを我慢しつつ、ようやく山頂へ。

前回登った時にはガスで殆ど見えなかった景色が、この日は薬師岳以外全て見えていました。

登ることができなかった水晶岳も、鷲羽岳も美しくその姿を見せてくれました。

雨で何も見えないかもしれないと思っていましたが、ここにきて全部を見せてくれました。

そして、中道への分岐の手前でなんと雷鳥ちゃんにも会えました✨

おそらくメスだったと思うのですが、子供はおらず、1羽でひょこひょこ登山道を歩いていました。

辛いことだけでなく、良いこともこうしてちゃんとありました🍀




中道は、お花畑がたくさんあり、特にコバイケイソウが沢山咲き乱れていました。

美しい景色を堪能しながら、ようやく双六小屋へ。

この小屋は本当に素晴らしい小屋で、トイレも水洗。そして個室なのでかなり気分的にも楽です。この3日間の山行で私の脚もかなり限界を迎えていました。

靴擦れ部分を守ろうとして靴紐緩めたせいでつま先の爪が死に、どこでやらかしたか左の膝の筋がおかしくなっていて、かなり痛い状態でした。情けない限りです。

この2日、体調不良と飲む気になれなかった私でしたが、この日の夜は久しぶりにビールを飲みました。


そして、翌朝。

4時半から朝ごはんを頂き、準備を整えいざ下山開始です。

花見平までは地味に登っていて、疲労が蓄積した身体には少しきつく感じますが、ゆるゆるゆっくりと登っていきます。

ここからはずっと下り。およそ1,500m程を一気に下っていきます。

左膝はどんどん痛み、外反母趾部分も痛くなって来ました。更に下りで相当足が前につんのめっていたのか、右足の爪にもかなりの痛みがありました。

それでも、順調にシシウドヶ原、秩父沢出合と下りて来て、ついに小池新道入口までやってきました。ここまで来れば、あとは林道。

暫く歩くと、わさび平小屋が見えて来ました。ここでラーメンを食べ、ゆっくり休憩してから最後の力を振り絞り、なんとか新穂高温泉へ到着!!



Nちゃんにすっかり頼りっきりでバス停に着いたのですが、私たちが乗るバスではなさそう、ということでとりあえずタクシーを探そうと新穂高ロープウェイの建物内に入って行きました。しかし、実はそのバスこそが乗るバスだったらしく、Nちゃんはしっかり調べていたにも関わらず乗れなかったのを悔しく思っていたようです。

私自身ちゃんと事前にそこまで調べていなかったのと、このバスじゃないと早々見切りをつけてしまったせいで乗れず仕舞いとなってしまい、申し訳なかったと思いました。

しかし、いずれにしてもチェックインには早すぎる時間だった為、かえって良かったのかもしれません。タクシー会社に電話すると、あいにく出払っているとのことで、1時間後のバスに乗ることにし、気を取り直しビールで安着祝いです。

そして無事に次のバスで宿へたどり着きました。

久しぶりのお風呂に浸かり、美味しい夕食を頂き、翌朝のバスで無事に新宿まで帰って来ました。

長くて危険な山旅でしたが、今回もNちゃんと一緒だったおかげで心強く、そして本当にお世話になりました!!

今回は残念ながら水晶岳には登れなかったけど、またいつかきっと挑戦しに行きましょう✨




【今回の裏銀座登山記録】   


初日行動時間 8時間43分(標準タイム 6時間55分) 

■山行タイム 6時間35分

5:15 高瀬ダム

5:42 登山口

10:52〜12:02 烏帽子小屋 

12:17〜12:29 前烏帽子岳

12:41〜13:12  烏帽子岳

13:38〜13:47 前烏帽子岳

11:57〜12:20 お昼

13:59 烏帽子小屋


二日目行動時間 7時間14分(標準タイム 6時間) 

■山行タイム 6時間41分

4:35 烏帽子小屋

7:34〜8:24 野口五郎小屋 

8:38〜8:47 野口五郎岳

10:48 東沢乗越

11:47 水晶小屋


  三日目行動時間 7時間55分(標準タイム 4時間15分) 

■山行タイム 6時間18分

6:48 水晶小屋

7:24 岩苔乗越

9:41〜11:01  三俣山荘

12:00〜12:23 三俣蓮華岳 59(1'00)

14:37 双六小屋 

 

四日目行動時間 6時間43分(標準タイム 5時間12分) 

■山行タイム 約5時間22分

5:45 双六小屋

7:00 弓折乗越

7:51〜8:11 鏡平小屋 

11:08 小池新道入口 

11:31〜12:20 わさび平小屋 

13:41 新穂高温泉 


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