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執筆者の写真junpei

三ノ戸山南東尾根〜三ノ戸山〜図窓山〜完全バリエーションルート第二弾

更新日:2020年3月10日






今週も天気予報はイマイチで、雪山に挑戦するには万全の天気ではないと思った私は、Tさんのお誘いをお断りし、読図訓練に出かけることにしました。

今回選んだルートは、川井駅から釜飯なかいまでバス道を歩き、南東尾根を伝って三ノ戸山に登り、更に図窓山を通って赤杭尾根で下山するルートです。

松原隆康さんの本にあったこのルートですが、⭐︎ということで、比較的易しいだろうと見越して選びました。今回は一人でチャレンジするので、万が一に備え、アルファ米の食料と、ツエルトを張ることを想定して張り綱も用意しました。

早朝、川井駅に向け出発です。天気はかなり良く、南岸に停滞していた低気圧の影響はなかった様子。読図だけとは言え、天気が悪いと精神的かつ周囲の地形を読むのにも影響があるので、良い天気は願ったりかなったり!

川井駅からは、釜飯なかいまで30分程の道のりをてくてく歩いていきます。この釜飯なかい、中学の同級生と大昔二人で食べに来たことがありました。高校生になって三重に引っ越した後も交流は続き、当時はお互い学生でした。確か、彼女と別れたばかりの彼を励ますべく奥多摩の自然を見に行こうと誘ったような記憶があります。

そのなかいの看板を左に折れ、途中鉄塔の標柱を発見。ガイドの通り道なりに進みますが、どうも違います。どんどん送電鉄塔のある尾根からは遠ざかって行きます。仕方なく今来た道を戻りつつ、送電鉄塔の案内を探しますが、見つかりません。結局振り出しのなかいまで戻ってきてしまいました。道の反対側に立ち話をしている地元のおじさまが二人いらっしゃったので、すぐさま近づいていって、声をかけました。

「送電鉄塔の巡視路に向かいたいんですが、入口がわからないんです。」

と相談してみると、今来た道をそのまま突っ切って行くと標柱があったと思うよ。と、教えてくださいました。とっても親切なおじさまで、お礼を言い、またも道を戻ります。ヘアピンカーブになっている道をそのまま道なりに行かず、道を横切るように真っ直ぐ上がる階段を登って行くと、行く手に土道が見えたので、「これか!!」と上がって行きました。しかし、ガイドにあった案内図は見当りません。仕方なく山肌に沿ってそれっぽい道を進んでみると、ありました!!オレンジ色の送電鉄塔の標柱です。

 「(左)新秩父線36号に至る」と消えかかった文字が確認出来ました。ようやくスタート地点へ到達です。古い堰堤を渡り沢の対岸に移ると、確かに巡視用の階段が現れました。

しかし、そのあとは全く踏み跡もなく、本当にここを進んでいいのか??と不安になることこの上ありません。ガイドによれば、


「南に斜面を巻きながら進み、そのあとわずかに尾根をたどり、再び南に向けて斜面を巻き、鉄塔の高台へ」


との記載。かなりざっくりした説明です。1/25,000の地形図で確認すると、おそらく鉄塔が立っている尾根上の510m地点に到達するには、現在地から南へ数えて2番目の尾根に乗ればいい。ということなのだと思いました。ということで、山腹をトラバースしながらコンパスで確認しつつ南方向へ進みつつ斜面を登って行きます。しかし、この斜面、かなりの悪路なのでした。足場はグズグズで蹴り込んで足場を作らないと、もろもろと斜面が崩れていきます。こんな斜面をトラバースするのは、相当危険。かなり斜度もある為、ずり落ちて滑落しそうです。本当はもっと山腹を巻き、南方向へ進まないとだめなのだろうと思いつつも、トラバース自体がかなり困難な為、じわじわ登りつつ巻くというスタイルで行くことにしました。このスタイルに変えても、やはり山側のお尻の筋肉が相当張ってきて、若干痛みを感じる程の急登です。立ち止まるのもやっとというような斜面で時折息をつきながら、上を見回し適当な尾根がないか探すという、かなりのサバイバル登山となってきてしまいました。

「これは、ダメだ」と断念するにしても、さっきの地点に戻れるかどうかも危うい気がしてきました。最悪なことに、GPSアプリの調子も悪く、現在地を確認することがほぼ期待できない状態で、こうなったらとにかく尾根を目指して登って行く他はありません。一歩一歩足場を確認しつつ、トラバース気味に高度を上げて行きます。すると、尾根らしきものが前方に見えてきました。

よし。これにとりあえず乗って、この尾根のピークに出てみよう。

そう決意し、眼前にそそり立つ斜面を慎重に登って行きます。途中尾根筋の方向を見てみると、ほぼ西をコンパスが指し示していました。地形図で見てみると、送電鉄塔を東からたどる尾根が確かにありました。

私の読図が間違っていなければ、おそらくスタート地点から一つ目の尾根を登っているはずです。間違っているにしても、この樹林帯では送電線がどこを走っているかも確認できない為、とにかくピークまで登って地形を確認する必要がありました。

途中息を切らしながら、滑落しないよう細心の注意を払って尾根を登ります。だんだん尾根の先に光が差している部分が見えてきて、あそこか??と近づいてきた時、なんと鉄塔の脚が目に飛び込んできました!!

「あっ!!鉄塔だ!!あってる!!」

思わず声を上げてしまった瞬間でした。その時の安堵感は、それこそ例えようもないものでした。ようやく到着!!36号鉄塔です。腰をかけ、ようやく落ち着いた心持ちで休憩しました。ガイドにあった通り、南から惣岳山、岩茸石山、そして棒ノ折山が見えていました。日の出山、御嶽山もよく見えています。暫し眺めを楽しんだ後は、この先の道筋をガイド、地形図両方で確認します。ここからは尾根筋をたどって行けば良い為、そんなに難しくないはずです。念のため、現在地から進もうとしている尾根筋の方向をチェックしますが、地形図通り北西方向。

「よし!!」

と、再び歩き始めます。尾根筋を上がって行くと、やがて611mに至り、広い尾根を北方向に進みながら一旦コルへ。途中巡視路の標柱と階段があり、心が休まります。やがて次のピークへ。送電線へ続く北東方向の尾根を見送り、今度は西向きに進路をとります。コンパスでその都度方向を確認しながらの歩行です。この辺りから行く手に三ノ戸山らしきものが見え始めました。

この尾根筋は平坦で、ちょっとした雑木林の広場といった風情。そうそう人が通らない場所ということもあるので、素敵な宝物を見つけたような幸せな気持ちになりました。

北には棒ノ折山、その西側に川苔山、南側には御前山と大岳山が木々の間から見えており、雑木林の中を散策気分でゆっくり歩きます。ここは、闇テンするには持ってこいの場所だなぁと思いながら歩いていると、一本の大きなカラマツに出会いました。途中から幹が二つに分かれている立派な大木です。

その美しさと立派さに心奪われ、思わず両手を広げて幹に抱きつきました。しばらく木にもたれてカラマツと同化すべく風の音を聴き、木が吸い上げる水の音が聴こえないかと耳を澄ませていました。

また、会いにくるね。とカラマツに伝え、その場を後にします。

やがて道は下り気味になっていて、コルの部分に北から伸びてきた登山道が横切るように現れます。それはそれは、しっかり、くっきりしていて、登山道ってこんなにわかりやすくてきれいな道だったんだ!と改めて気付かされます。登山道を横切り、またもバリエーションで適当に山頂を目指して登って行きます。途中大きな岩があり、ガイドでは岩を左に見ながら直登と書いてあるのですが、ここを左に巻くようにリボンと木にペンキで印がしてありました。おそらく山腹を巻きながら山頂を目指すように道をつけてあるのだろうと思いましたが、ここまでで十分このバリエーション急登は経験済みなので、あとわずかの斜面ということもあり、迷わず直登します。三ノ戸山(809m)山頂です。眺望もなく、すぐに下山しますが、この急登を下りるのはちょっと嫌だなと思った為、南に一度巻いて、リボン伝いにさっきのコルまで戻ってきました。ここからは登山道を使って図窓山に向かいます。赤杭尾根を歩くのはこれが初めて。川苔山から派生しているこの尾根は、古里駅まで続いていますが、距離がある為鳩ノ巣への杉ノ尾根より傾斜がゆるい感じがします。しばらく尾根道を行くと、古里駅と川井駅の分岐へとやってきました。

図窓山へは、この分岐のちょうど真ん中にあたるバリエーションの尾根を使って登ります。尾根伝いにしばらく登ると図窓山北峰(721m)。ここでガスでお湯を沸かし、カップそばを食べました。その後尾根伝いに一度コルに下り、次のピークが図窓山南峰(690.2m)です。木漏れ日がまるでスポットライトのように三角点を差していて、ガイドブックに書かれている通りの静かな山頂でした。

さて、あとは登山道に戻って下るだけ!と南東方向に伸びる尾根で登山道へ戻ろうとしましたが、これがとてつもなく急坂!!前回日蔭本田山から下りる絶壁のような尾根を彷彿させる勢いの急峻な尾根です。

踏み跡もなく、自分の読図感覚を信じて下りる他ありません。もう一度コンパスで自分が進むべき方向を確認。尾根とも思われないような絶壁を一歩一歩慎重に下りて行きます。すると、ガイドにあった、コンクリートで補強された岩を発見!!

自分の下りてきた尾根が間違いなかったことの証です。安堵!!

やがて登山道にぶつかり、順調に下山してきましたが、登山道に戻れた嬉しさで、すっかり古里に下りる破線ルートを探すのを忘れていました。気付けばかなり歩いてきてしまっており、方向はすでに南東を向いています。ああ、これは完全に通り過ぎたな。と思い、仕方なく川井駅方面に下山することにしました。あとで調べてみると、この古里方面の破線は、かなりわかりにくいらしく、通り過ぎてしまったと書いている人もいて、どうやら相当な悪路らしい。行かなくて良かったのかもしれません。しかし、一応登山道としてルート表示されている川井駅方面ですが、こちらも通る人がいないらしく、かなり廃道っぽい雰囲気を醸し出していました。両側から迫り来る木々が覆いかぶさり、相当狭い道幅です。更に集落が見えてきてからの急坂にも閉口させられました。幸いトラロープが設置されていた為、ありがたくそのロープを伝って下山完了!!

ひとりぼっちのバリエーション第二弾は、無事にコンプリートできました!!

今回のルートもなかなかのもので、⭐︎ひとつとは思えない悪路でした。遂に遭難か…??との不安が幾度もよぎりましたが…そうならなくて、本当に良かったです。

さて、来週は、いよいよNちゃんとツエルト泊登山!!楽しみです!!



【今回の三ノ戸山~図窓山の登山記録】

行動時間 4時間57分(標準タイム 3時間25分)

■ 山行時間 3時間55分(道迷い分を差し引く)

7:25 川井駅

8:00 釜飯なかい  35

8:50 36号鉄塔南東尾根入口 45(道迷いでロス)

9:25〜9:40 36号鉄塔 35(35)

10:34 三ノ戸山 55(55)

10:51 分岐 16

11:02〜11:20 図窓山北峰 11【27】(25)

11:28 図窓山南峰 8(10)

12:22 川井駅 54(推定値45分)




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