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執筆者の写真junpei

初めてのテント泊!!〜笹尾根縦走〜

更新日:2020年2月11日





11月の2週目。それは、Nちゃんが横浜に出張で来る事が決まった時に決めた山行予定。

その日がついにやってきました。

元々この山行は、奥多摩の深部である酉谷山に登る為、日原から続く長い破線ルートを使って避難小屋に泊まりながら縦走するという、今年の目標でもある「破線ルート克服」の総仕上げとして計画していた山行でした。

しかし、台風19号の爪痕は大きく、この計画のスタート地点である日原集落は道路崩落で孤立状態が続いており、復旧の目処は全くたっていない状況。致し方なく他のルートを模索していました。そこで考えたのが、以前から気になっていた笹尾根縦走です。

私が信奉している服部文祥の「百年前の山を旅する」という書籍冒頭に書かれていたのがこの「笹尾根縦走」でした。


〜木暮理太郎は東京帝国大学哲学科を中退した編集者で当時35歳、田部重治は東京帝国大学英文科卒の大学教員で25歳だった。木暮はこの登山以前に、まだ地図もない中央アルプスや南アルプス北部を単独で登っており、力のある登山家としてブレイク直前だった。一方田部はこの時まだまともな山登りをほとんどしたことがなく、山に泊まるのは初めてという初心者だった。その後、田部は案内人なしでの北アルプス大縦走を成功させたり、笛吹川釜ノ沢を世に知らしめたりと時代を代表する登山家に成長し、名著「山と渓谷」によって山岳文学の世界でもその名を不動のものにしてゆく。1909年の笹尾根縦走は、そんな田部の原点になった登山なのだ。〜「百年前の山を旅する」服部文祥著


かつて登山と呼ばれるものが、山頂を踏んで帰ってくるのが主流だった頃、尾根を歩き山頂をつないで旅をする所謂「縦走」を最初期に行ったのが田部重治と木暮理太郎という二人の登山家であり、またその場所が「笹尾根」だったということで、いつか私も二人の足跡を服部文祥さんのように辿ってみたいと思っていました。

そこで、今回のこの笹尾根縦走をNちゃんに提案したところ、二つ返事で快諾してくれました。以前Nちゃんにもこの本を勧め、読んでもらっていたこともあり、すぐにイメージが湧いたようでしたが、いつもながら私のトリッキーな山行計画に付き合ってくれる事自体幸せな事!!本当にありがたいです。

Nちゃんの了承を得た為、本格的に計画に入りましたが、この笹尾根、本当に長い!!広義でいけば三頭山から高尾山までという事で軽く30キロは越えているようです。高尾山から陣馬山までは10回以上は歩いているいつもの道という事で、その先から三頭山までを繋ごうと

考えますが、それでも長い。避難小屋も三頭山近くに一つしかない。となると、避難小屋を使っての山行は現実的ではありません。色々考えあぐねた結果、「テント泊しかない」との結論に至りました。しかし、試しに購入と軽く言える程の値段ではない為、ここはZさんに頼ってみようと二人用テントを貸して欲しいとお願いしてみました。すると、すぐにOKのお返事を戴いた為、今度はNちゃんに了承を得ます。当然私が提案していることもあり、テント等の主たる装備は私が背負うことにし、更に計画を進めました。

ネットで調べた情報や服部さんの本を駆使して、最終的には生藤山から三頭山に向かって歩き、途中丸山で宿泊という計画で落ち着きました。しかし、懸念されるのは途中いくつもあるアップダウンと基本的に登りがベースになっているという二つの点。殆どの登山者が標高の高い三頭山から入っています。しかし、ここはやはり田部、木暮二人の足跡を追う為に頑張ろうと心に決め、準備を進めました。

11月という季節を考えると、防寒対策は必死。また、1番の心配の種は「水」でした。

テント泊を決意したのは良いとして、そもそも私たちが幕営地として選ぶのは、テントを設営しても良いとされているテン場ではなく、所謂闇テンです。当然付近に水場はありません。となると、途中水場で水を補給するか、はたまた初日行動中に飲む水、宿泊時に調理用として使う水、更には翌日の行動中に必要な水を全て初めから背負っていく必要があります。

ネットでは、日原峠付近にある水場は枯れることなく豊富だったとの情報が殆どだった為、とりあえずそれを信じて水場までは通常登山の2リットルを背負い、水場で更に2リットル強を補給することにしました。

そしていよいよZさんからお借りしたテント、調理器具、食材。これらを全て詰めてみるとなんと15キロ。これに水と酒を加えるとおそらく20キロは背負うことになるでしょう。

ヤバイ…。これ、本当に背負って歩けるんだろうか!?

どんどんどんどん不安が押し寄せてきます。ただ、安心材料としては、笹尾根にはエスケープルートが数多くあり、どの峠からも1時間程度で里に下りられるということ。もし、水が枯れていた、とか、もうこれ以上歩けない!等有事の際も臨機応変に対応可能なところがテント泊初心者の私たちには有難い事。多少荷物はNちゃんにも手伝ってもらうことにして、いよいよ登山前日を迎えました。軽く飲みながら翌日の予定を最終確認し、酒を調達。寮で就寝となりました。


いよいよ迎えた当日の朝。天気予報通り、雨が降っていました。しかもかなりしっかりした雨です。午前中早い時間帯は雨、その後は天気回復で、午後通り雨があるかもしれないとの

予報だった為、ある程度は覚悟していましたが、この強さで降られると中止せざるを得ないかもしれません。かなりどんよりした気持ちで駅へ向かいます。しかし、電車に乗っているうちに天気は急速に回復。藤野からバスを乗り継ぎ、鎌沢入口に着く頃には完全に雨は上がっていました。良かった良かったと喜んだのも束の間。登山口までの1時間の舗装路歩きが予想外に急登で、みるみる体力を奪われていきました。吹き出す汗。上がる息。ずっしりと肩に食い込むザック…。これは、山登り等無理かもしれない。とフラフラの状態でようやく登山口に設置されている休憩所に到着です。

とにかくザックの重さは、想像を絶する重量で、まず持ち上げて背負う事自体が至難の業。

「よいっしょ!!!!」と声を出さなければ絶対に持ち上がりません。こんな事では先が思いやられるなぁと、げんなりしながら、いよいよ登山道に入ってみると、途端に歩きやすくなりました。やはり、舗装路がどれだけ体にダメージを与えるかを身を以て感じさせられる瞬間なのでした。しかし、当然いつものペースで登ることは不可能で、ゆっくり一歩一歩、登っていきます。まずは尾根に乗るまでの生藤山までが勝負。途中かなりの急登もありながら、標準タイムからも然程遅れずに三国山、生藤山までやってきました。この調子なら、なんとかなるかもしれないと、いよいよ笹尾根に入っていきます。その名の通り、熊笹に覆われた静かな縦走路ですが、基本樹林帯で眺望もなく、ただ黙々と歩いて行きます。そして次々やってくる地味にきついアップダウン。だんだん足取りも重くなり、浅間峠に到着する頃にはオーバーペース気味でした。ここでお昼を食べ、問題の水場目指して出発です。日原峠から水場までは5分と書いてありましたが、実際歩いてみると全くその気配はありません。更に天気があまり良くない為辺りは薄暗く、道も狭いトラバース道で崩落気味。本当に水場なんてあるのか!!??と不安になり始めた頃、遠くから沢の音が聞こえ始めました。

ありました!!水場です。しかも、こんこんと湧き出ています。早速Nちゃんにも2リットルの水を汲んでもらい、私も2リットル強の水をまずは新しいプラティパスに詰め、もう一つのプラティパスに1リットル程追加しました。これでおそらくザックは20キロ越え。肩ベルトを持って肩の位置まで持ち上げることすら困難で、ヨロヨロとよろめきながら、なんとか背負います。更に重量を増したザックの重みで倒れそうになりながら、標準タイムで1時間の最後の行程を進みます。しかし、ここで予報通り雨が降ってきました。仕方なく、カッパを着込み、ザックカバーをして進みます。弱い雨で良かったと思いながら、限界ギリギリの体力を振り絞って、ついに丸山へ到着しました!!すると、待ってましたと言わんばかりに雨が勢いよく降り出しました。まずはとにかくテントを張らなければいけません。大雨の中、焦りながらの設営だった為、試しに設営した時とは違い、なかなか上手に立てられません。必死にフライシートまで設置したところで、とりあえず雨が止むまでテントの中に入ろうということになり、ずぶ濡れになったザックも引き込んで避難。荷物もたくさんテント内においてあるので、ペグを打つのは止めました。設営している間にあっという間に濡れてしまったパンツを脱ぎ、テント用のダウンパンツに着替え、シュラフマットを敷き、シュラフにくるまり、荷物整理等していくうちにだんだん心も落ち着いてきました。それにしても、ひどい雨です。こんなに強い雨が降るとは思っていなかった為、これはかなりの誤算でした。すると遠くの方で音が…。「ゴロゴロゴロ…!!」思わず二人で顔を見合わせます。雷…??「大丈夫かな??」「大丈夫じゃないですね…。こうなったら仲良く二人で雷に打たれて逝きましょう。」さすがNちゃん、肝が据わっています(笑)確かに、こうなったら運に天を任せるしかありません。「神様〜!!」と手を合わせ、どうか雷が来ませんようにと本気で祈りました。その願いを聞いてくれたかくれないか、本当に有難いことですが、雷鳴を聞いたのは、それが最初で最後でした。

やがて雨が去り、テントを開けてみてみると、雲海が見えていました。良かった!これからは急速に天気が好転するに違いありません。みるみる雲は過ぎ去って行きました。17時を回り、今度は急速に闇が迫ってきていました。そこから今度はご飯の支度です。Nちゃんは持参したサンダルがどうやらあまり使い物にならなかったらしく、足が冷えきり、泣きそうになっていました。そこで、私はとにかく早くご飯を食べて温まろうと準備して行きます。まずはせっかく泊まるのだからと持ってきたソロストーブに火をつけようと頑張りますが、予想外の雨にやられ、木が濡れているので、思うように火がつきません。やっとついた火を保ちながら、固形燃料を使ってメスティンで米を炊き、同時進行でお湯を沸かし、凍らせてきた食材でキムチ鍋を作っていきます。カット野菜にニラとしめじを追加した冷凍野菜、醤油とコチュジャンで下味を付けて凍らせたバラ肉、更に冷凍したキムチを全てコッヘルに入れ、鍋の素、水を入れ火にかけます。2つ目の固形燃料を追加したところで、今度はフライパンに醤油、和風だしの素、砂糖、水を入れ、煮立ったら冷凍玉ねぎと焼き鳥缶(たれ味)を凍らせたものを投入。メスティンに割れないよう入れてきた卵を時間をおいて流し入れ、アルミ箔の蓋をかぶせて数分。ちょうど米が炊けたので、親子丼の出来上がりです。食べてみると、うま〜い!!やはり、疲労した体には温かい食べ物が一番です。あっという間に親子丼を平らげ、次にキムチ鍋を食べてみます。こちらも、うま〜い!!残ったご飯を最後に入れて、雑炊に。これまた、うま〜い!!山ご飯は大成功でした。しかし、乾杯用に背負ってきたビールは保存状態が良すぎ、未だ凍っていた為、翌日まで持ち越すことにし、二次会はテント内でホットウイスキーを楽しむことにしました。

気付くと空には月が。ほぼ満月に近いこの月明かりは少し心を強くしてくれました。炊事の後片付けが終わり、テント内でようやく乾杯です。

この夏の旅行の時にRさんから頂いた、白州のシングルモルトの小瓶を開け、ストレートで頂きます。良い香りを楽しみつつ、クイッと飲むと、液体が通り過ぎた後、暫くしてから喉元がカーーっと熱くなります。美味しい!!体もこれで温まっていくようです。次にコンビニで購入した知多ウイスキーの小瓶。これはホットウイスキーとして頂きます。二人でちびちびやりながら、この日一日の過酷な道のりを振り返り、よくやったねとお互いをたたえ合いました。本当に、いつの間にやら私たちも随分たくましくなったものです。しかし、テントを背負っての縦走は相当きつい為、翌日は予定を変更し、数馬へ下山することに決めました。そうすれば、丸山から2時間程で下山できる為、出発も遅くてOK。近くの温泉に入って丁度午前中のバスに乗れば、早い時間に帰ってこられる…。ということで、残りの笹尾根は次回に持ち越すことにし、6時起床で8時出発ということに決めました。そうと決まれば、気持ちも楽になり、更に楽しい宴が続きます。様々な話をしている間にいつの間にやら夜も更け就寝は21時過ぎでした。

途中風の強い時間もありましたが、眠りが浅く目が覚めても、月明かりでテントに木々の影が映っているのを見てなんだか安心したりして、初めての野営の割に恐怖も感じずそこそこ眠ることができました。心配していた寒さも、防寒着を着込んだせいで暑いくらいで、全く問題なしでした。(Nちゃんは寒かったようでしたが。)

朝方、辺りが明るくなっているのに気付き、起きました。5時45分。そこから朝ごはんの準備です。

ふと気づくと、木々の間から富士山が真正面に!!おーーーそんなところだったんだ!とびっくり。朝は時間がない為、フリーズドライの豚汁に、トックを投入したもの。これもなかなか美味しい!本当は親子丼に添えようと思って持ってきた三つ葉を散らし、富士山を眺めながら美味しい朝ごはんを食べました。その後荷物をまとめ、撤収。なんとかザックにもきちんと荷物を押し込み、丸山に別れを告げます。大分減っているはずの荷物でしたが、感じる重さに然程の変化はなく、相変わらずゆっくりしか歩けない状態で、いくつかのピークをやり過ごし、ようやく数馬峠手前の分岐までやってきました。本当は、数馬峠から下山する予定でしたが、この手前の分岐を下りると、途中大羽根山という山があり、北側の展望があるらしい。今回、天候不良で殆ど眺望がないままだった為、急遽こちらのコースに変更し、下山して行きます。下りは重みが膝と腰にストレートに伝わる為かなりきつく、慎重に下りて行きます。暫くすると、北側が開け、月夜見山が真正面に見えるポイントがありました。天気も良く、真向かいの浅間尾根がよく見えており、西の方に目を向ければ、山の合間に雲取山らしき山容も確認できました。その後大羽根山を経て、無事に浅間峠登山口に下山!!数馬の湯前のバス停に腰掛け、昨夜飲まなかったビールを開けて乾杯!なんと未だキンキンに冷えていて、過酷だった登山を締めるのにふさわしい美酒の味でした。

温泉で汗を流し、立川の駅ナカでプチ打ち上げをして、今回の大冒険「笹尾根縦走」は終了しました!!

いつもながら、冷静沈着なNちゃんのおかげでなんとか初めてのテント泊もできました。本当に、本当に、ありがとうございました!!

そして、大切なテントを快く貸してくださったZさん、ありがとうございました!

この山行で、大分自信がついたような気がします。初めてのテン泊にしては、上出来だったのではないでしょうか!!??

しかし、奢ることなく、謙虚にまた次の目標に向かって頑張って行こうと思います。


【今回の笹尾根登山記録】   


1日目 行動時間 7時間13分(標準タイム5時間30分)                ■山行タイム 6時間35分 


7:40 鎌沢入口

 8:48〜9:03 休憩所 1'08(1'00)

9:15〜9:25 佐野川峠 12(10)

10:01 三国山 36

10:10〜10:25 生藤山 9【45】(60)

11:09〜11:15 熊倉山 44(25)

12:07〜12:25 浅間峠 52(40)

13:12〜13:50 日原峠(水場往復15分含む) 47(60)

14:07 土俵岳 17

14:52 小棡峠 45【62】(30)

15:18 丸山 26(15)


2日目 行動時間 1時間59分(標準タイム1時間40分)

■山行タイム 1'46


8:12 丸山 

 8:25 笛吹峠 17(15)

 8:55 分岐 30(25)

 9:17 〜9:25 大羽根山 22

10:11 浅間峠登山口 51【71】(60)





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