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  • 執筆者の写真junpei

北岳〜間ノ岳

更新日:2021年8月7日





いつかはお隣の間ノ岳まで行ってみたい。と常々思っていました。

その後Tさん、Nさんとの飲み会で、計画が持ち上がったものの、天候とスケジュールがうまく合致しなかったり、台風19号で大樺沢の登山道が破壊されたりしているうちに、昨年はコロナで山小屋が営業休止になってしまいました。

今年は人数を絞って小屋の営業が再開されるということで、長時間の電話攻撃の末ようやく肩ノ小屋を2泊確保。

Nちゃんは足に不安があることから、人生最大のイベントかもしれない雲ノ平登山の日まで調整をお願いすることにし、最終的には3人で向かうことになりました。


前回は真夜中に出発し、芦安始発のバスに乗って北岳山荘まで行きましたが、今回は乗合タクシー目当てに若干遅めの出発。しかし、芦安に到着してみるとタクシーは1台しか出ないことが判明。残念ながら、バスで行くことになってしまいました。バスの時間までは1時間以上ありましたが、致し方なくぼんやりと待ちます。そして道路の混雑でなんと30分もバスが遅れ、予定より随分遅い出発となってしまいました(泣)

他に術がないので仕方がないのですが、だんだん天気のことが心配になってきました。

ヤマテンの予報では、上空に寒気が入り、雷雨の恐れがあるとの予報だったからです。


一昨年、間ノ岳と北岳の間の稜線上に落ちた雷で一人の大学生が亡くなるという痛ましい事故がありました。それが、社内のある方の息子さんだというお話を聞き、驚きと共に山の天気の恐ろしさも痛感しました。森林限界を超えた稜線、しかも3,000m級の高所では、雷は真横にも飛ぶそうです。隠れるところがどこにもない稜線上で、どう対処するのが一番正しいのか、いくら考えてもよくわかりませんし、これを単に運命だと言って良いものかどうかもわかりません。

ただ、ひとつだけ言えることは、山の天気は変わりやすい。だからこそ遅くとも14時までには小屋に到着していなければならない。ということです。

身近な方が、しかもこれから行こうと思っている場所で亡くなったというこの事実は、改めて山での天候急変の恐ろしさを心に刻むきっかけにもなりました。

だからこそ、ヤマテン予報はそれこそ他人事ではなく、この出発時刻では、よりその危険度が高まったな…と不安になってきたわけです。


ようやくバスが広河原に到着し、歩き始めたのが9時20分過ぎ。ただでさえ私の力量では時間が相当かかるだろうに、この時間からだとどう頑張っても小屋に着くのは15時を過ぎる計算です。とにかく、小屋まで天気が持ってくれることを祈りながら、歩き始めました。

白根御池との道を分け、大樺沢方面へ。暫くは沢と付かず離れずの道が続きますが、ついに大樺沢の本流へ出てくると、辺りが一気に開け、北岳が大きく視界に入ってきます。そこが二俣の分岐。

広河原から遠目に見えた北岳が、目の前にどどーーんとそそり立っています。


前回はそのまま大樺沢を進み、八本歯のコルへ向かいましたが、今回は右俣コースで肩ノ小屋へと向かいます。ゴツゴツの岩肌がカッコいいバットレスを左に見ながら急登をじわじわ進んでいきます。地形図で見た通り、その混んだ等高線は容赦無く体力を奪い、それこそヘロヘロになりながらの歩行。苦しい中振り返ると、鳳凰三山がだんだん目線と同じ高さになり、オベリスクが間近に迫ってくるように見えました。辛いながらも、「あそこ、登ったんだなぁ。」と想いを馳せることで元気を振り絞ります。

何度も何度も立ち止まり、息を入れながらようやく草すべりの分岐までやってきました。そこからひと頑張りで、ついに稜線へ…!!ここで初めて仙丈ヶ岳と甲斐駒ヶ岳が目の前に見えました。甲斐駒ヶ岳は、中央高速や中央本線からもよく見えますが、仙丈ヶ岳の姿を見るのは久しぶりのことです。やはり、この山、大きい!!


さて、ここまでくれば小屋まであと一踏ん張り!!

ゆっくりゆっくり歩を進め、ついに小屋へ到着!!なんとか天候も持ってくれて、ありがたい限りです。荷物を整理し、なんと健脚Nさんが担ぎ上げてくださったヒエヒエのビールでまずは安着祝い。

その後今シーズンから始まったという新メニュー、肩ノ小屋の「肩ロース」を美味しく頂き、翌日の縦走を控え早々寝ることにしました。しかし…。なかなかの爆音で殆ど眠ることなく朝を迎えることになってしまいました。そんな中、ひとつ嬉しかったのは、夜中にトイレに立った時、満天の星空が眺められたこと。

山小屋で眠れないというのは、しょっちゅうあることなので、一日くらい眠れなくたってなんとかなると思いながら歩いたことも過去に何度もありました。しかし、今回は引きこもり生活で弱体化した中でのハード登山。果たして本当に耐えられるのかどうか、不安がみるみる増大していきます。とにかく、根性で乗り切るしかありません。


肩ノ小屋から間ノ岳ピストンの標準コースタイムは6時間40分。心配なのは、北岳山荘から北岳までの登り返しです。この日も、午後から雷雨が予報されており、危険性も前日より増している為、昼くらいまでには小屋に戻りたいところ。しかし距離もあり、おそらく私の体力では北岳の登り返しに相当時間を費やすことになるだろうと予想されました。

小屋にある程度の荷物は置いておけるとしても、さすがに森林限界を超えたこの長距離を歩くのに丸腰というわけにはいきません。

北岳山荘でお昼の提供があれば、食料も道具も持たずに行けるところですが、緊急時のことも考え、ガスとリフィルのカップヌードルを1食分、行動食、ツェルト、雨具、防寒具、ファーストエイドキット、水。と、必要最小限の荷物を準備しました。

お弁当にしてもらった朝ごはんを食堂で頂き、日の出寸前に小屋を出発。いきなりの急登で登山開始です。岩稜帯を登り詰めると、北岳(3,193m)山頂へ到着。鳳凰三山、富士山、間ノ岳、仙丈ヶ岳、中央アルプス、北アルプス、甲斐駒ヶ岳、八ヶ岳…。360度の絶景!!

晴れた朝にはつきものの、美しい雲海も広がり、素晴らしい景色に見惚れます。こうして見渡した時に、登ったことのある山が増えてきたのも感慨深いもの。


さて、今日はここからが勝負です。まずは北岳山荘までの長い下り。山荘で休憩をし、今度は稜線を間ノ岳に向けて出発です。高低差はさほどないとはいえ、こうして見てみると、かなりのアップダウンがありそうです。まずは中白根山までじわじわと高度を上げていきます。一旦下り、比較的なだらかな稜線を進むとやがて間ノ岳までの登りがやってきます。あの頂きまで!と目星を付けていたポイントが、まだまだ山頂の手前だったりで、げんなりしつつもとうとう、間ノ岳(3189,5m)山頂へやってきました!!長い!!


到着の嬉しさに酔いしれているわけにもいかず、今来た道を戻ります。下りで少しでも時間稼ぎをすれば、登り返しで時間がかかっても余裕があるかもしれないと、少し頑張って歩きました。順調に北岳山荘まで戻ってきたので、時間もまだ早く、とりあえず第一関門は無事に突破。山頂は風が強いだろうから、途中でお昼を食べるなら北岳山荘かなぁと思っていましたが、なんとTさんは食料を小屋に置いてきてしまったとのこと。

それなら早く肩ノ小屋へ戻りゆっくり食べた方が、天候のことを考えても安心です。とりあえず、北岳への過酷な登り返しに取り付くことになりました。

前回来た時も感じたことですが、やはり吊り尾根分岐までの登りが相当キツい。途中立ち止まり、息を整えながらでないと歩くことができません。それでも、じわじわ山頂直下の最後の急登を越え、やっとこさこの日2度目の山頂を踏むことができました♪万歳!!


山頂から周囲を見回すと、怪しげな雲がポコポコと湧いて出ていました。この雲、猪熊さんの本で見たことある…。ヤマテン代表の猪熊さんは山岳専門の気象予報士として有名ですが、この方の著書や講座で同じような雲を見た気がしました。

帰宅してから以前受けた講座の資料を見てみると、やはり、ありました。あのポコポコと連なるピークそれぞれの真上辺りにいくつも湧き上がっている雲はやがて発達し、積乱雲になるのです。

まさに、観天望気!!

こういう時は昼過ぎには小屋に着いていた方がいいと、当然のことながら書いてありました。

やはり早く帰ってこられて本当によかった。


小屋に戻って、お湯を沸かしラーメンを食べ、着替えを済ませるとサウナ状態の部屋に戻り、倒れ込むように横になりました。とにかくヘトヘトで、体を休めたかったからです。

その後ストレッチをしようと起き上がってみると、お向かいに一人の女性がいらっしゃいました。ストレッチしながら、色々お話をしていると、旦那様と坊やと3人で一緒に登ってきたとのこと。北岳山頂から下山途中にすれ違った若いパパと、ハーネスをつけられながら歩いていた4歳の坊やがまさにそのご家族だったらしい!

聞けば、旦那様はアルパイン系の登山をずっと続けてきたそうで、ご結婚されてから奥様もいろんな山に登るようになったとか。二人は翌日山頂に登るにも関わらず、北岳山荘のTシャツを買うために出かけたとのこと。4歳で自力で北岳に登るなんて、本当にびっくり!!将来が楽しみだこと!!


その後生ビールを飲みに階下へ降り、私はまた暫くごろ寝していましたが、そろそろ夕食の時間だった為、一旦外に出ました。すると、広場で先程の奥様、Tさん、Nさんが山頂をずっと見つめています。いつの間にか周囲は厚い雲に覆われ、稲光と轟音で今にも雨が降り出しそうな天気に変わっていました。やっぱり、ヤマテン当たったな…と思いながら3人のところへ行ってみると、なんとまだ旦那様と坊やが帰っていないとのこと。既に17時は目前で、この天気でまだ戻っていないとなるとかなり心配です。

Nさんが持ってきた双眼鏡が、この時大活躍!!やがて山頂から降りてきた二人をしっかりと捉えました。幸い、パラっと降ったくらいで北岳周辺には落雷しなかったので、無事にお二人は戻ってきました。あ〜ほんとに良かった!!

さて、二日目の夕食はお魚。こちらもとっても美味しく頂いて、就寝となりました。


鳳凰三山の向こう側から登ってきた朝陽をありがたく拝み、朝5時の朝食を頂いた後、いざ広河原に向けて出発です。

小太郎尾根分岐で仙丈ヶ岳と甲斐駒ヶ岳に別れを告げ、草すべりへ。急な登山道を降りていくと、眼下に白根御池が見えてきました。ここでゆっくり休憩し、さらに急坂を進むと、この辺りから急に登ってくる登山者が増えてきました。

祝日で登山者自体も多いのでしょうが、ちょうどバスが着いたタイミングでどうしても数珠繋ぎで登山者がどんどん登ってきます。

いくら登り優先とはいえ、これではキリがありません。

途中行けそうな時に、一気に下り、暫しやり過ごすという感じにぐいぐい降りていくと、登山道から林道が見えた辺りで人が少なくなりました。その後はマイペースでゆっくりと下山。ついに広河原へ戻ってきました!!!

予定より早く降りられ、しかも祝日で乗合タクシーにも乗ることができ、嬉しい限り。

3日分の汗を芦安の温泉で流し、無事に自宅に戻ってきました!!

体力不足でどうなることかと懸念していた北岳&間ノ岳でしたが、蓋を開けてみれば、三日間ともほぼほぼ標準コースタイムで歩けていたようです。

私、頑張った!!!!(自画自賛)

今回もTさん、Nさん、お世話になりました。

ありがとうございました!!


1週空いて、次は一生に一度かもしれない雲ノ平への山旅が待っています。

楽しみです!!



【今回の北岳登山記録】   

初日行動時間 5時間36分(標準タイム 5時間30分) 

■山行タイム 4時間36分

9:20 広河原

9:43 分岐  23(25)

11:35〜11:43 大樺沢二俣 1’23(2'05)

13:50 草すべり分岐 2’07

14:12 小太郎尾根分岐 22【2’29】(2’30) 

14:56 北岳肩ノ小屋  44(30)


二日目行動時間 7時間37分(標準タイム 7時間15分) 

■山行タイム 約6時間半

4:43 肩ノ小屋

5:15〜5:24 北岳  32(30)

6:15〜6:31 北岳山荘 56(50)

7:09 中白根山 38(40)

8:14〜8:30 間ノ岳 1'15(1'00) 

9:44〜10:10 北岳山荘  1'15(1'20)

12:20 肩ノ小屋 2'10(2'20)


三日目行動時間 3時間55分(標準タイム 3時間40分) 

■山行タイム 3時間40分

5:30 肩ノ小屋

5:51 小太郎尾根分岐  21(20)

7:09〜7:20 白根御池小屋 1’18(1'30)

9:12 分岐 1’52(1’30)

9:25 広河原 18(20) 


∴ 百名山記録 39/100   【丹沢山 奥白根山 筑波山 草津白根山 四阿山 浅間山   金峰山 瑞牆山 火打山 妙高山 大菩薩嶺 鳳凰三山  谷川岳  蓼科山  雲取山 八ヶ岳 常念岳 仙丈ヶ岳  甲斐駒ケ岳 赤城山 男体山 岩木山 富士山 美ヶ原 北岳 両神山 鳥海山 霧ヶ峰 那須岳 至仏山 安達太良山 木曽駒ケ岳 御嶽山 会津駒ケ岳 燧ケ岳 五竜岳 苗場山 平ヶ岳 間ノ岳】

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