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  • 執筆者の写真junpei

薬師岳

更新日:2022年7月30日






夢だった日本最後の秘境「雲ノ平」に向かった去年。およそ40㎞の道のりを3泊4日で踏破した長い長い山旅は、Nちゃんのおかげで本当に楽しく、思い出に残る山行となりました。

その後二人の間で話題に上ることも多く、去年見るだけだった薬師岳に登ってみようということになりました。

今回のスタート地点は前回と同じ有峰湖近くの折立。初日は薬師岳山荘まで登り、翌朝山頂に登頂したら一気に折立まで戻るという行程です。去年長い山旅の初日、折立から5時間のところにある太郎平小屋に宿泊した私たち。予想以上に初日の行程が楽だったことから、なんとか1泊2日で行けるだろうと計画を立てました。

薬師岳は北アルプス立山連峰の主要峰で、その姿はどっしりと大きく、白い砂礫とハイマツの緑のコントラストが美しい雄大な山容です。長い山旅の一番最初に出迎えてくれたこの山に登り、楽しかった雲ノ平山行の余韻に再び浸りたいという気持ちを胸に、仕事終了と共に富山へ向かいました。

Nちゃんと合流し、まずは前夜祭。富山フードを頂きながら楽しい宴は続き、あっという間に9時半を過ぎてしまいました。

翌朝6時。バスに乗り込み富山から2時間かけて折立に到着です。ここから薬師岳山荘までは標準コースタイムで7時間の行程。単純標高差でも1,350m程あり、久しくそんなハード登山をやっておらず、更にはコロナ禍で体を動かすことが減ってしまったなまくら体で本当にきちんと歩けるのか!?と不安は拭えない状況。ゆっくりでいいからとにかく山荘まで頑張ろうと、歩き始めます。

折立からはいきなり400m程の急登。道も悪く、ジメジメした樹林帯を地道に高度を上げていきます。木道が見え始めると多少等高線は緩みますが、小屋まではダラダラとした登りがずっと続きます。三角点を過ぎ、地味に続くゴロゴロした石ころが転がる階段状の道を登っていくと、ようやく五光岩ベンチへ到着しました。去年ここに着いた時には多くの人が休憩していましたが、今年は人も少なく空いていました。お昼はあともう少し頑張って太郎平小屋で食べることにし、ここでは行動食のみの休憩。小屋まで残り1時間半となり、あとひと踏ん張りと気合を入れます。

やがて遠くに小屋が見え始めると、チングルマの群生地が見え始めました。ところどころイワカガミも咲いていて、まさにお花畑!!



あまりの可愛さに声を上げていると、先を歩いていた女の子が「こっちにもたくさんありますよ!」と声をかけてくれました。木道にひざまづき、みんなで写真撮影会。少し前から私と同じ「山と道ONE」のザックをパンパンにして歩いていた彼女を、きっとテント泊なのだろうと賞賛の眼差しで眺めていた私たちでしたが、お話してみると、なんと雲ノ平山荘で働くとのこと!!それでこんなに大荷物だったのか…!!ずっと夢だったという小屋での仕事に、とにかく胸躍らんばかりのワクワク感が伝わってきます。若いっていいなぁ。と、素敵な笑顔の彼女がキラキラと眩しく見えました。


そして、ようやく太郎平小屋へ到着。

懐かしの田部重治が書いた看板を感慨深く再び眺め、お昼を食べることにしました。天気は怪しいながらも、ガスの間に薬師岳がちゃんと見えていました。1年ぶりの再会に感動しながら、ゆっくりお昼を食べ、残り2時間の道のりを出発です。

歩き始めてすぐ、池塘が出現したので写真を撮っていると、後ろから「クークー」という声が聞こえてきました。

何だろう?と振り返ってみると、なんと雷鳥が…!!しかも、周囲には雛が3羽ほど走り回っていました。どうやら、お母さんが赤ちゃんを心配しながら呼び集めているようです。草が茂っていて、姿はハッキリとは見えませんが、ピヨピヨ言いながら遊び回る赤ちゃんの可愛いこと!!暫くすると、すぐ近くのハイマツの下にみんな隠れて行ってしまい、姿が見えなくなりました。

思いがけず雷鳥親子に出会えて、本当に幸せでした。



そこから一旦坂を下り、薬師峠のテント場へ。既に6、7張のテントが点在。薬師岳山荘は雨水しかないため、ここで水筒とプラティパスに目一杯水を汲みます。ずっしりと重くなったザックを背負い歩き始めると、一つ目の難所約150mの急登がすぐに始まりました。なかなかの道で、途中沢登りかと思うような部分もあり、手も使いながら登ります。すぐに息が上がり、途中で立ち止まらないと先には進めなくなってきました。やはり、行程も終盤に差し掛かり、かなり体力も無くなってきていることから、相当にキツイ内容となりました。ようやく激坂が終わり、薬師平が見えてきました。ここで休憩を入れ、残り100m程の急登に備えます。足とお尻には疲労が蓄積し、なかなか足が前に出ませんが、ゆっくりゆっくり進みます。ようやく小屋が見え、あと15分の看板を心の支えにしながら、ついに薬師岳山荘へ到着しました!



もともと雨予報が出ており、初日も午後から雨が降るはずでしたが、結局降られることなく小屋へ着き、しかも展望もそこそこあったことから、ラッキーな1日でした。

テント泊の方達や、おそらく太郎平小屋から登ってきた人たちが山頂を踏んで帰ってくる中、私たちにその日山頂を踏んで帰ってくるという選択肢はなかった為、早速お部屋へ向かいます。奮発して個室を選択した為、とにかく快適さは最高!荷物を広げ、着替えもゆっくりできました。そうこうするうちに夕食の時間になった為、ビール持参で食堂へ直行♪

この日誕生日だった私に、なんとNちゃんからビールをご馳走してもらい、誕生日を祝ってもらいました!!

夕食は、おでん、水餃子、トンカツ、カボチャの天ぷらとバラエティに富んだ美味しいお食事でした。その後歯磨きをして早めの就寝となりましたが、なかなか寝付けません。やがて外から雨音が聞こえてきました。だんだん雨脚は強くなり、バケツをぶちまけたような雨が屋根を叩くように降ってきました。これはマズイ。夜中に雨が降るのは予報通りでしたが、この降り方は激しすぎる…。だんだん不安になって眠るどころではなくなってきた頃、ものすごい稲光と共に雷が鳴りました。この一帯でテント泊をしている人たちは、一体今頃どうしているだろうと思いを馳せつつ、この堅牢な建物の中でこうして安全に過ごせるありがたさが身に染みます。それにしても、この雨では翌日山頂に行けないばかりか、途中の沢が増水して、もしかすると帰れないのではないか??と更に不安が募ります。布団の中で、神様に必死にお祈りしているうちに、22時を過ぎ、ピタッと雨音がなくなりました。少しホッとしたものの、この日ほとんど眠れないまま起床時間の3時になってしまいました。

雨音がそれほど気にならなかったので、降っていないだろうと思いましたが、実は弱い雨は降り続いていました。しかも、準備している間にどんどん雨脚が強くなってきました。

さて、どうしよう…。

Nちゃんと相談の結果、とりあえず朝食を先に食べ、4時まで待ってダメだったら諦めようということになりました。すると、霧雨程度に収まってきたので、行くことを決意!!雨仕様完全フル装備で、必要最低限の荷物を持ち、ヘッドランプの灯りを頼りに山頂を目指します。山頂だろうと予想していた人工物のあるピークは、壊れた避難小屋があるだけで山頂は更に先だったことが判明。かなり落胆しながら山頂へ進みます。途中、だんだん風雨は強さを増し、吹き飛ばされそうな程になってきました。かなり危ない状況が続き、視界が悪くて道を間違えそうになったりして心が折れる寸前。バチバチと痛い程顔に当たる雨、そして煽られる程の風の中での歩行ではありましたが、寒さは感じなかったので低体温症になる危険はないと判断し、とにかく山頂を踏むために必死で歩きました。


そして、ついに薬師岳(2,926m)へ到着!!

滞在時間はわずか数分。余韻に浸る暇もなくすぐに下山開始です。あとは下山するだけですが、山頂直下は一番風雨が激しく、ちゃんと下りられるか不安になってきました。それでも、小屋が片道1時間の距離にあることはかなり心丈夫。また、山頂から避難小屋の間は平坦な稜線が続いている為、ケルンがいくつも建てられていましたが、こういう悪天候の中でこのケルンの存在は有難く、安心材料のひとつになりました。更に視界が悪くなれば、方向を見誤る可能性はかなり高くなる為、やはりケルンは貴重だな。と改めて感じました。

去年太郎平小屋で聞いた五十嶋さんのお話「愛知大学山岳部遭難事故(三八豪雪)」が思い出され、これが雪だったらと思うと恐ろしくなりました。

小屋が視界に入ってきた時は、心から安堵。無事に山頂から戻ると、小屋の女将さんや宿泊している方達から労いの言葉を頂きました。

山頂を踏まずに撤退かも。と、覚悟しましたが、なんとか山頂を踏めて本当に良かった…。

小屋で荷物の整理をし、再度出発する頃には雨は止み、周囲の景色もだいぶ見えるようになってきました。あの雨の中下山しなければならないかとげんなりしていたところだったので、本当に有難い限りです。



小屋の方にお礼を言って、出発。懸念していた沢のようだった岩場は、それほどの増水もなく、無事にテント場まで戻ってきました。テント場から少し登り、一帯を見渡せるポイントに差し掛かると、雲ノ平の向こうに水晶岳、ワリモ岳、槍ヶ岳、三俣蓮華岳、双六岳、黒部五郎岳…と、去年登った山々や黒部源流域のまさに秘境地帯がずらりと見えていました。眺望は全く期待していなかったこともあり、これだけの山々が見られるなんて本当についています。

太郎平小屋に無事到着。既に登山者は小屋を出発した後なので、広場もひっそりしています。

暫くここには来られないだろうと思うと名残惜しいですが、いよいよ別れを告げ、折立へ下山です。

五光岩ベンチで行動食を食べ、順調に下山し、三角点が近づいてきた頃でした。残念ながら再び雨が降ってきました。レインウエアを再度着込み、降りていきます。雨脚はなかなかのもので、かなりげんなり。

三角点では休憩なしで先へ進みます。途中登りの人たちと多くすれ違うようになりました。この雨の中を登るのはきついだろうなぁ…。まだ下りの方が精神的には楽なのだから…と自らを鼓舞しながら下りていきます。三角点を過ぎると、足元の悪い部分が増え、最後の難関はまだ続いていましたが、ようやく見覚えのある巨木を発見し、ゴールが近いことを悟りました。ようやく折立に到着!!

やはり何度経験しても、雨登山はきつくて修行以外の何物でもありません。

それでも、バスの時間には余裕で間に合う時間。怪我なく下りて来られて何よりでした。

しかし、その後バスの時間まで1時間半あまり、雨宿りできるのはキャンプ場の水場だけ。下山した人たちがぎゅうぎゅうの水場の一角でバス待ちというのも、なかなか修行に近い状況でした。疲労感マックスで動く気になれなかったものの、少し落ち着いたのでお湯を沸かし、非常食のリゾッタをNちゃんと分けて食べました。バスにようやく乗車し、あとは宇奈月温泉目指して向かうだけ!!

疲れた体を温泉で癒し、近くの食事処で後夜祭。部屋での二次会で飲み過ぎてしまいましたが、楽しい宴でした。

翌朝始発のトロッコ電車で欅平へ。欅平から黒部ダムへ続く下の廊下。そして仙人谷ダム近くの火山帯の中を掘った恐ろしい隧道。

映画「黒部の太陽」や吉村昭の「高熱隧道」に描かれている通り、ダム建設の為にどれだけの人命が失われたかと考えると、いつか下の廊下も歩いてみたいし(クレイジーなこの道を歩けるかどうかは甚だ疑問ですが)、黒部ダムも見てみたいものです。2024年には、黒部ルートが一般公開されるらしいので、こちらも是非とも見てみたい!!

そんなこんなで欅平から戻り、帰路となりましたが、黒部ダムには秋、立山登山とセットで行ってみようとNちゃんと話しています。

さて、今回もなかなかボリューミーな山行となり、思い出深い山旅となりましたが、いつものことながらNちゃんがいるおかげで心強く、そして楽しい旅となりました。

Nちゃん、ありがとうございました!!

また、素敵な山旅をご一緒しましょう。


【今回の薬師岳登山記録】    初日行動時間 7時間1分(標準タイム 7時間10分)  ■山行タイム 5時間39分 8:30 折立 9:56〜10:08 三角点ベンチ  1'26(2'00) 11:36 〜11:46 五光岩ベンチ 1'28(1'30) 12:34〜13:08 太郎平小屋  48(1'30) 13:37〜13:45 薬師峠 29(20) 14:28〜14:40 薬師平 43(40) 15:31 薬師岳山荘 51(1'10) 二日目行動時間 6時間45分(標準タイム 6時間30分)  ■山行タイム  5時間49分 4:12 薬師岳山荘 4:57〜5:04 薬師岳 45(60) 5:38〜6:10 薬師岳山荘 34(40) 7:12 薬師峠 1’02(1'20) 7:42〜7:55 太郎平小屋 30(20) 8:33〜8:43 五光岩ベンチ 38(60)  9:42〜9:46 三角点ベンチ 59(60) 10:57 折立  1'11(1'10)

∴ 百名山記録 43/100   【丹沢山 奥白根山 筑波山 草津白根山 四阿山 浅間山   金峰山 瑞牆山 火打山 妙高山 大菩薩嶺 鳳凰三山  谷川岳  蓼科山  雲取山 八ヶ岳 常念岳 仙丈ヶ岳  甲斐駒ケ岳 赤城山 男体山 岩木山 富士山 美ヶ原 北岳 両神山 鳥海山 霧ヶ峰 那須岳 至仏山 安達太良山 木曽駒ケ岳 御嶽山 会津駒ケ岳 燧ケ岳 五竜岳 苗場山 平ヶ岳 間ノ岳 鷲羽岳 磐梯山 西吾妻山 薬師岳】


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